【病院・歯医者・クリニック向け】悪質なGoogle口コミの削除・発信者情報開示請求



病院・歯医者・クリニック向け 弁護士による口コミ削除セミナーのお知らせ



01 悪質な口コミによる病院・歯医者・クリニックへの影響

Google口コミは病院・歯医者・クリニック以外にも様々な店舗でも存在しますが、医療分野においてはその専門性の高さから口コミの内容についても「技術」「設備」といった部分よりも「丁寧に話してくれた」「やさしく接してくれた」というような情緒的な部分について書かれることが多くなっており、そういった情緒的な内容はより閲覧しているユーザに強く訴えかけるものになっています。

2020年にサイジニア株式会社が行った調査によると、病院・クリニックを選ぶ際の判断基準(複数回答可)について、「クチコミでの評判」と回答した方の割合は52.5%となっており、2人に1人は口コミを判断基準にしているという結果が出ています。
また、同調査には、Googleマップを使って病院・クリニックを調べたことがあるかについて、「はい」と回答した方の割合は52.5%という結果も出ており、Google口コミにおける悪質な書き込みを放置することは病院・歯医者・クリニックの運営に障害が発生したり、患者数の減少につながってしまいます。

02 よくある書き込み例

(1)診察内容について

さきほども述べたように、医療分野は専門性の高さから、こちらとしてはきちんと診断していたとしても、「ちゃんと診てもらえなかった」「上から目線で話された」「待ち時間は長いのに診察時間が短かった」といった診察内容についての不満の書き込みが多くなってしまっています。

(2)受付・事務の対応について

話し方や態度に関する口コミは医師だけでなく受付・事務についても対象となっているため、「態度が悪すぎる」「事務員の対応が最悪」「受付の人の愛想が悪すぎる」といった書き込みがされやすくなっています。

場合によっては「受付の●●さんは□□だ」というように職員のプライバシーに関する書き込みをされることもあり、そうなってしまうと病院だけでなく職員自身の問題へと広がってしまいます。

(3)上記のよくある書き込みに対する注意点

このような書き込みについて知っておいて欲しいことは2つあります。

①個人の感想と評価される書き込みは削除に応じられにくい


「ちゃんと診てもらえなかった」「態度が悪かった」「清潔感がなかった」というような口コミはあくまでも個人の感想として評価され、削除申請をしても対応されない傾向にあります。
そういった口コミに対しては他の部分で削除の対象となる内容が無いかを確認判断する必要があります。(例:「清潔感がなかった」という口コミと一緒に「いたるところにカビが生えている」など理由が書かれている場合、病院内の写真を撮影するなどして、口コミの内容が真実でないことを証明して削除申請をする。)


②病院ではなく職員に対する書き込みの対応について


職員のプライバシーに関する書き込みの削除等を弁護士に依頼する場合、病院の口コミ内に書かれていたとしても、職員の方に委任状を書いていただく必要がある場合があります(当事務所にご依頼いただく場合は事前に口コミの内容を確認し、病院からの委任で問題ないか、職員の方に委任いただく必要があるか判断しお伝えいたします。)。

03 Google口コミを削除するには

(1)Googleビジネスプロフィールに登録する

Google口コミに対する報告はGoogleビジネスプロフィールのオーナで無くても可能ですが、以下の理由から登録しておいて損はありません。
Googleビジネスプロフィールへの登録方法はGoogleビジネスプロフィールの公式サイトをご確認ください。
なお、Googleビジネスプロフィールは2021年11月にGoogleマイビジネスから名称変更されていますので、過去にGoogle
マイビジネスに登録している場合は再登録する必要はありません。


①オーナーとして申請できる


Google口コミに対する報告フォームは、一般ユーザーとGoogleビジネスプロフィールのオーナーとで別のものになっています。

【一般ユーザーからのレビュー報告の表示】

Googleビジネスプロフィールオーナーからのレビュー報告の表示】


統計は取れていませんが、感覚としてオーナーからの申請の方が削除されることが多い傾向にあります。

②口コミがされた際に通知がくる


Googleビジネスプロフィールに登録していなくてもGoogleが利用者が便利に使えるように利用者から提供される情報などを参考にしてマップに掲載されることがあります。そして、その情報にも口コミをすることができてしまうので気づかないうちに悪質な書き込みがされている恐れがあります。
ビジネスプロフィールのオーナーになることで口コミをされたときに通知のメールが届くので悪質な口コミに対して素早い対応が可能になります。
特に後述する発信者情報開示請求をする場合はプロバイダのログ保存期間があるため、口コミがされてすぐに対応する必要があります。

③口コミに対してオーナーとして返信ができる


口コミの内容によってはどうしても削除に応じてもらえない場合があります。そうした口コミの対策方法の一つとして、オーナーから口コミに返信することによって、書き込んだ人だけでなく、口コミを見た人にも誠意が伝えることができます。

ただし、口コミの返信ができるからといって安易に返信をしてしまうのは危険です。
悪質な書き込みに対して、こちらの感情を顕にして書き込みをすると相手の感情を逆撫でしてしまったり、他の口コミを見ている人にも感情に身を任せるような態度の病院だと思われたり、謝罪し改善するという返信をしたとしても別の口コミで「●ヶ月前の口コミに改善します。と書いていたのに全然改善していなかった」というようなことも書かれる恐れがあります。
当事務所では、口コミに対して返信したほうが良いのか、返信したほうが良いのであればどのような文面がいいのか等のアドバイスも行っています。

(2)口コミに対してポリシー違反を報告する


Google口コミに対する報告は、各口コミの右上にある【︙】マークを押して出てくるメニューの「レビューを報告」からすることができます。


「レビューを報告」を選択すると、先程ご紹介したレビュー報告のページが表示されるので、該当するものにチェックを入れて、「報告を送信」を押すことで手続は完了です。



報告送信確認の画面は表示されますが、その後は「口コミを削除した」「削除には応じられない」という通知は来ないため定期的に確認をする必要があります。1ヶ月経っても削除されなければ削除に応じてもらえなかったと思ったほうが良いでしょう。

(3)法的な理由で報告する

Googleのポリシー違反に該当しない口コミに関しては「法的事項に関するヘルプ」から専用の報告フォームへアクセスし、どの法律に違反しているのか等を選択し、送信する必要があるため、弁護士に相談することをお勧めします。



(4)削除仮処分の申立

フォームからの削除請求が通らなかった場合、削除仮処分(正式には「仮の地位を定める仮処分」と言います[民事保全法]。)手続による削除請求をすることになります。この手続は債権者(例:口コミをされた病院)の住所地の裁判所を管轄とすることが認められます[民事保全法第12条1項・民事訴訟法第5条9号]。

削除仮処分はその名の通りあくまでも「仮」の手続ですが、相手方(今回の場合はGoogle)がさらに争う姿勢を見せず、口コミが削除されれば「仮」の手続で終了となりその後の手続は不要になります。これまでの経験上、Googleは決定に従い口コミが削除されています。(削除仮処分の決定に対して相手方が争う姿勢を見せた場合は、訴訟で争うことになります。そのため、相手方が争う姿勢がありそうと判断した場合は最初から訴訟提起をする場合もあります。)

削除仮処分の申立は上記(1)~(3)と比較して、より専門的な知識が必要となるため自力で行うことは困難です。Google口コミにお困りの病院・歯医者・クリニックの経営者様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

(5)発信者情報開示請求

口コミを削除しても何度も同じ内容が書き込まれたり、口コミにより損害が発生している場合は発信者情報開示請求を行い、口コミをした人物を特定して示談交渉や損害賠償請求訴訟をすることが考えられます。
この発信者情報開示請求は、削除仮処分とは違い、プロバイダ責任制限法(正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」と言います。)により定められていますので、相手方の住所地の裁判所へ申し立てる必要があります。Google口コミの場合は、Googleが2022年7月に外国会社登記をしたことで東京地裁へ申し立てることになります。

発信者情報開示請求の主な流れは以下のとおりです。

①発信者情報開示請求の申し立て
②双方審尋等を行い裁判所が相当性を判断
③開示決定(相当性が認められた場合)
④GoogleからIPアドレス*1が開示される
⑤開示されたIPアドレスからアクセスプロバイダ*2を調べる
⑥アクセスプロバイダに対し発信者情報開示請求
⑦投稿者へ意見照会・口頭弁論
⑧判決
⑨アクセスプロバイダから投稿者の情報が開示(⑧で勝訴判決だった場合)

*1 IPアドレス
インターネットでデータの送信元や送信先を識別するための番号。Internet Protocol addressの略。
*2 アクセスプロバイダ
携帯電話会社やインターネット通信会社等、インターネット接続サービスを提供する事業者等のこと。
アクセスプロバイダに対して、Googleやネット掲示板、SNS等を運営する事業者等のことをコンテンツプロバイダと言う。

ここで問題となるのが、アクセスプロバイダによってはログ保存期間が短いことがあるという点です。Googleへの開示請求の手続で早くても半年程度はかかってしまいます。すると、IPアドレスが開示されたとしてもアクセスプロバイダの方で投稿者の情報が削除されていることで開示されない恐れが出てきます。そのため、口コミをされてから1ヶ月以上経っているものに対しての開示請求は難しくなっています。そのため、ビジネスプロフィールのオーナー登録をして通知が来るようにしておき迅速な対応ができるようにしておくことをお勧めします。

2020年8月31日に省令改正により、電話番号を開示請求できるようになりました。弁護士であれば弁護士会照会制度[弁護士法第23条の2]を利用することで電話番号から契約者の情報について調査することができますが、この電話番号についても投稿者がGoogleの2段階認証などで電話番号を登録している場合に限られます。

発信者情報開示請求も削除仮処分と同じく自力で行うことは困難です。Google口コミにお困りの病院・歯医者・クリニックの経営者様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

(6)【補足】改正プロバイダ責任制限法と発信者情報開示命令について

2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、これまでコンテンツプロバイダとアクセスプロバイダの2段階に分けて行っていた発信者情報開示請求を一体的に審理するための新制度(発信者情報開示命令)が導入されました。今回の法改正により、従来の発信者情報開示請求に比べて、簡易な手続きで早期解決が期待されています。
当記事執筆時点では法改正から日が浅いため、情報が少なくなっていますので、さらに詳しい情報は後日追記もしくは別記事にてご紹介予定です。

(7)【補足】口コミ削除業者について

2021年8月22日に読売新聞オンラインで「病院の口コミ改ざん業者が高評価に書き換え…「評価3・5以下なら大変」と営業攻勢」という記事が掲載されました(閲覧には会員登録が必要です。時間経過により記事が削除されている場合があります。)。
主な内容として、口コミ削除を謳っている業者自体が複数のGoogleアカウントを作成し、病院等に低評価の口コミを行い、口コミ先の病院等へ「弊社独自の技術で削除できる」などと営業を行い、契約後に業者が書き込んだ口コミを削除(Google口コミは投稿者ならいつでも削除可能なため)したうえで、高評価の口コミを行うことで成功報酬を得ているというものです。
もちろん、全ての業者がそのようなことをしているわけでは無いでしょうが、上記で解説した削除仮処分や発信者情報開示請求、開示請求によって特定した相手方との示談交渉などの代理業務は弁護士にしかできませんので、特にすでに悪質な口コミをされているのであれば、まずは弁護士にご相談ください。

04 Google口コミ問題に対応をする弁護士の選び方

2023年上半期時点のGoogle口コミ投稿者の発信者情報開示請求だけで言えば、管轄裁判所が東京地裁になるため、日当・交通費を考えるとインターネット問題に強い東京の弁護士を選択した方がいいかもしれません。
しかし、法改正(民事訴訟法等の一部を改正する法律《令和4年法律第48号》)によりウェブ期日の参加要件が緩和され、これにより発信者情報開示請求についてもウェブ期日での参加ができるようになるかもしれません。そうなると日当・交通費を理由にわざわざ遠方の弁護士を選択する必要は無くなってくるかもしれません。
さらに、病院・歯医者・クリニックが抱えている問題はGoogle口コミだけでは無いはずです(クレーム対応問題社員対応など)。地元の弁護士にご相談いただくことで様々な問題に対して対応・アドバイスを受けることができます。

発信者情報開示請求は、相手方の住所地の裁判所へ申し立てる必要があり、大手プロバイダは東京などの都市部に所在していることが多いため、地方の弁護士事務所では対応していないということも珍しくありません。HPを見て取り扱い案件に含まれているか確認したり、実際に問い合わせしてみることをお勧めします。

すでに顧問弁護士がいる場合でも、顧問弁護士がIT関係について詳しくないという理由で断れれたため、セカンドオピニオンとしてご相談にきていただくお客様もいらっしゃいます。

当事務所は和歌山では数少ないインターネット問題・企業側の労働問題に力を入れている法律事務所です。Google口コミだけでなく、IT・インターネットに関わる問題や労働問題でお困りでしたら、ぜひ当事務所までお問い合わせください。

05 当事務所のサポート

当事務所では今回ご紹介した「任意削除請求」「削除仮処分」「発信者情報開示請求」「損害賠償請求」「口コミへの返信アドバイス」全てについて対応可能です。
初回の相談料は無料になっておりますので、Google口コミに悪質な書き込みがされていてお困りでしたらまずはお気軽に当事務所までお問い合わせください。
初回相談料60分無料 TEL:073-488-1026 営業時間 9:00〜18:00/土日祝 応相談

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