未払いの売掛金を回収する方法と回収を進める際の注意点を解説

売掛金を回収できない事態になれば、収入を計上できないだけでなく、事業経営にも大きな悪影響を及ぼしかねません。売掛金の未払いが発生した場合は、放置せず直ちに回収を図ることが重要です。本記事では、未払いの売掛金を回収する方法と回収を進める際の注意点を解説します。

売掛金における時効

債権の消滅時効に関する民法の規定

債権回収の時効に関する最も基本となる規定は、民法116条です。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(引用:民法|e-Gov法令検索

この2種類の起算点(時効がスタートする地点)から数える時効期間のうち、いずれか早く到来したときに、債権の消滅時効が成立します。

売掛金回収のために債権の時効の進行を妨げる方法

債権の時効は、一度時効期間がスタートしたものであっても一定の事由がある場合に進行を妨げることができます。時効の進行をを妨げる方法として民法に定められているものは以下の2つです。

  • 時効の更新
  • 時効の完成猶予

「時効の更新」とは、進行している時効期間をリセットして、新たに時効期間をスタートさせる制度です。確定判決や権利の承認等により認められます。「時効の完成猶予」とは、時効の進行を一時停止させ、一定期間だけ時効を延長することができる制度です。催告や裁判上の請求を行えば認められ、時効の完成が猶予されている間に時効の更新を図ります。もし、債権の時効完成が迫っている場合は、時効の完成猶予や更新が認められるように行動を起こすことが重要です。

売掛金の未払い発生時にとるべき回収方法

商品・サービスの提供を停止する

継続的に商品やサービスを提供している中で売掛金の回収が遅れ始めた場合、まずはそれ以上の商品・サービスの提供を止めることを検討しましょう。未回収の売掛金が発生しているにも関わらず更に商品・サービスを提供してしまうと、未回収となる売掛金額の増大につながるからです。回収の目処が立っていない売掛金が膨れ上がれば、リスクは拡大する一方です。未回収分の支払いが行われるか、支払いの目処が立つまでは商品・サービスの提供を止めることを相手方に主張することが必要です。

自社の未払い金との相殺

売掛金が発生している企業に対して、自社から支払うべき未払金がある場合は、それらを相殺し、売掛金の回収額の減額を図ります。そして、相殺が可能である場合は相殺する旨を通知し、破産してしまったことで回収不能となるような事態を予め防ぐようにしましょう。相殺を持ちかけることも売掛金の回収方法の一つであることを念頭に置きましょう。

電話やメールでの催促

売掛金の支払い期限が過ぎているにもかかわらず入金が確認できない場合は、まずは電話やメールで相手方に連絡を取りましょう。請求書の処理や振込対応などにおける単なるミスであれば、この段階ですぐに解決する可能性が高いです。また、相手との信頼関係がまだ損なわれていない場合や、円滑な話し合いができる関係性であれば、まず電話やメールで催促をすることが有効な手段といえます。

当事者間での協議

相手方が売掛金の返済ができない事情がある場合は、当事者間で協議を行います。返済方法や返済期日を決める必要があるからです。連絡が取れない等の事態に陥ると法的手段を検討せざるを得ないため、可能であれば相手方に協議に応じてもらうよう穏便に話を進めることを推奨しています。また、協議を行う場合は、協議内で決定した内容を正式に書類として記録しておくようにしましょう。

内容証明郵便の送付

協議に応じてもらえない場合は、相手方に催告書や督促状を内容証明郵便を使って送付します。内容証明郵便を用いることで、訴訟に発展した際に有効な証拠書類として残すことができるため、一般的な郵送による送付ではなく、内容証明郵便の活用を推奨しています。また、内容証明郵便に法的拘束力はありませんが、相手方に心理的な圧力をかける効果があります。さらに、自社名義よりも弁護士名義で送付するとより一層強い催促をすることが可能ですので、弁護士への相談を早期に検討しましょう。

売掛金を回収できない場合の法的手段による回収方法

仮差押え

裁判所に訴えを起こす前に、相手方の資産に仮差押えを実施することが重要です。仮差押えを行うことで、強制執行が可能になるまでに相手方が資産を移動させたり隠したりする事態を防ぐことができます。回収の対象となる資産が無くなることで回収ができなくなるリスクを、減らすことにつながります。

即決和解・民事調停

相手方との協議を基にして法的拘束力のある手続きを進めたい場合は、簡易裁判所で行う即決和解や民事調停を利用することを推奨しています。即決和解とは、当事者同士の和解内容を裁判所が和解調書にすることを指し、公正証書と同じく強制執行力を有します。当事者同士だけの話し合いでは合意に至れない場合は、調停委員を第三者として合意解決へと導く民事調停を利用しましょう。調停が成立すれば、強制執行力を有する調停調書が作成されます。強制執行力があることで、相手方が支払いを行わなかった場合に財産を差し押さえることができるため、支払いのプレッシャーをかけることができます。

支払督促

訴訟よりも穏便で簡易的な裁判手続として、「支払督促」という手段があります。支払督促とは、裁判所から支払いを催促する文書を出してもらう制度のことを指します。相手方から異議が申し立てられなければ主張が確定し、訴訟と同じ効力を得ることができます。裁判所への出頭や多額の費用などの負担も避けることができ、一般的な訴訟よりも簡単な手続きかつ短期間で終了することもあるため、非常に有効な方法と言えます。

訴訟

上記の回収方法を試しても回収することが難しいと判断した場合は、訴訟に踏み切ります。必ず仮差押えを行ってから訴訟手続きに進むことが重要です。「通常訴訟」のほかに、売掛金の請求額が60万円以下であれば、「少額訴訟」を利用して時間や費用を抑えることも可能です。訴訟は費用や日数がかかるため、会社の負担も大きくなることを覚えておきましょう。

強制執行

裁判所による決定事項が出ても相手方が応じない場合、強制執行を実施します。確定判決や調停調書を債務名義として、強制的に債権回収を行います。予め仮差押えをしておいた財産があれば、確実に強制執行を掛けることができます。強制執行には書類の準備などの細かな手続きが必要ですので、弁護士のアドバイスを受けながら手続きを進めることを推奨しています。

売掛金の回収方法でお困りなら当事務所まで

売掛金の回収は、まずは当事者間の話し合いでの解決を図り、まとまらない場合は法的な手続きを進めていくという流れで行います。しかし、事案によって最適な手段は異なる上に、売掛金弁済を主張できる債権には時効があるため、回収を進めるためには迅速かつ適切な判断が迫られます。相手方の弁済を強く促し、法的手続きをスムーズに行うためには、専門家のアドバイスは不可欠です。弊所では、企業における使用者側トラブルに関して、経験豊富な弁護士が売掛金の回収に関するご相談を承ります。回収方法に困っている方やこれから回収を検討したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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