企業がとるべきパワハラ対応策とは|注意すべきポイントを弁護士が解説

パワハラ(パワーハラスメント)の対応を誤ると、企業の信頼性が損なわれ、場合によっては訴訟にまで発展してしまいます。パワハラ発覚時は主観的な判断で処分を決定するのではなく、順序立てた対応方法に基づき、客観的な立場から調査や認定を行わなければなりません。また、パワハラを発生させないための予防策を講じることで、安心できる職場環境の構築に努めることも重要です。
本記事では、社内で発生したパワハラに対して、企業がとるべき対応策や予防策について解説します。

企業がパワハラ対応策を講じるべき理由

パワハラへの対応は企業の義務

労働施策総合推進法によって、企業がパワハラ対策を行うことが義務付けられています。企業側は、従業員からパワハラの相談があった場合、必要な措置を講じなければなりません。さらに、パワハラの相談を行ったことを理由に、その従業員等に不利益な扱いをすることも禁止されています。パワハラが発生した場合、企業側には速やかな対応が求められます。パワハラ対策は世間の風潮に合わせて行うものではなく、法律上の義務であることを理解しておくことが重要です。

※労働施策総合推進法とは
正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といい、令和2年(2020年)からパワハラ防止対策義務化が施行されたことから、通称で「パワハラ防止法」とも呼ばれています。

パワハラが企業に与える影響

パワハラは、被害者の仕事に対する意欲や生産性が低下するだけに留まらず、従業員の休職や退職といった職場を離れる事態を招き、これは周囲の従業員の士気を下げることにも繋がります。このような風潮が生まれてしまうと、人材不足などの問題も発生してしまいます。また、場合によっては企業の安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求をされる事態に発展することもあり、健全な企業運営を脅かす原因となります。パワハラは、被害を受ける従業員本人だけの問題ではなく、企業全体にとっても重大な問題であることを認識しなければなりません。

一方で、厚生労働省の『職場のハラスメントに関する実態調査について(令和5年度調査)』によると、ハラスメントの予防・解決のための取組を進めたことによる副次的効果として、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」「会社への信頼感が高まる」「休職者・離職者が減少する」「メンタルヘルス不調者が減少する」「従業員の仕事への意欲が高まる」等が挙げられており、きちんとパワハラ対策を行うことで企業へのプラスの影響も発生させることができます。

パワハラ発生時に企業がとるべき対応手順

事実関係を調査する

従業員からパワハラの相談があった場合、まずは事実関係を調べることが重要です。被害者だけでなく、行為者や周囲の関係者も含めて広くヒアリングを行います。また、パワハラの事実を証明するメールや録音などの証拠の有無も確認しましょう。可能な限り、客観的な事実判定を行えるように調査を進めましょう。

パワハラの有無を判定する

調査で得た事実内容をもとに、パワハラがあったと認められるかどうかを判断します。事実認定は、客観的な視点から見れていることが重要です。自社内での判断では意見の偏りがあると感じる場合は、弁護士などから客観的な意見を聞くことをおすすめします。認定した事実関係は、調査報告書にまとめて、関係者に通知します。この調査報告書は訴訟になった際の証拠になるため、調査方法に不備が無いことや客観的な判断がなされているかが重要となります。

被害者への配慮措置を講じる

調査結果を被害者・行為者の本人たちに通知するとともに、被害者への配慮措置を迅速に行います。具体的には、事案の内容を考慮した上での行為者との関係改善に向けての援助、行為者と引き離すための配置転換等を行います。また、被害者にメンタルヘルス不調が見られる場合は、管理監督者または事業場内産業保護スタッフ等による相談対応等を行います。

行為者への処分を決定する

パワハラの事実が認定された場合は、行為者への処分を検討する必要があります。パワハラの内容や行為者の反省度合い、会社の就業規則などを考慮しながら適切な処分を検討しましょう。懲戒処分を行うことで、行為者本人に強い制裁を与えることができるだけでなく、他の従業員に対して企業側の姿勢を示す効果もあります。しかし、安易に降格や懲戒解雇といった重い懲戒処分を下してはいけません。客観的・合理的に妥当な処分でなければ裁判で無効と判断される可能性があるため、注意が必要です。

その他にも、被害者への配慮措置と合わせて、配置転換や被害者への謝罪等の措置も行いましょう。

パワハラを予防するために必要な対応

社内規定を整備する

パワハラを予防するためには、あらかじめ社内におけるルールを明確にしておかなければなりません。パワハラに関する社内規定を整備し、企業としての対処方針を明示しましょう。特に、パワハラ行為者に対する懲戒処分など、罰則に関する内容を示すことが重要です。罰則の規程が明示されていることでパワハラの抑止効果があるだけでなく、従業員に安心感を与えることができます。

相談窓口を設置する

パワハラは、早期に発見して被害拡大を防止することが重要です。ハラスメント等を対象とする相談窓口を設置して、従業員がハラスメントに関する悩みについて話しやすい環境を整えましょう。社内に窓口を設けるだけでは、被害者が人事評価や情報漏洩を懸念して相談をためらう可能性があります。そのため、相談窓口は弁護士等の社外にも設置することをおすすめします。

従業員の理解を深める

パワハラが発生する要因の一つに、従業員が当該行為をパワハラだと認識できていないことがあるため、従業員のハラスメントへの理解を深める必要があります。具体的には、一般従業員・管理職それぞれを対象としてパワハラに関する研修を行うことが挙げられます。パワハラの定義や企業としての対処方針、相談窓口などについて説明をすることで、発生の抑制・早期の発見に繋がります。職場内の意識向上を図ることが重要です。

また、研修の講師として、弁護士を起用することも効果的です。弁護士であれば最新の法令や判例を踏まえた具体的な解説等ができるため、従業員のパワハラへの理解を深めるだけでなく、企業のコンプライアンス体制強化にも繋がります。

定期的に実態調査を行う

企業側が積極的に実態の把握に努めることも重要です。社内でパワハラが発生していないか、または発展しそうな状況の有無を定期的に調べましょう。手段としては匿名アンケートが有効です。ハラスメントを受けているかどうかという質問はもちろん、ハラスメントを見たことがあるかという間接的な情報も集めるとより具体的に状況を把握できます。被害者の訴えによって発覚する事例は氷山の一角に過ぎないという可能性もあるため、企業側から調査する姿勢が重要です。

パワハラ対応で注意すべきこと

パワハラの対応は迅速に行う

パワハラの相談があった場合は、速やかな対応を心がけましょう。相談を放置したり、パワハラを軽視して被害者に対して雑な対応をしたりすることは絶対にしてはいけません。パワハラに関する訴訟では必ずと言っていいほど「会社に相談したが対応してもらえなかった」という主張がでてきます。相談があってから迅速に対応し、履歴を残すことで、従業員からの会社への信頼感の向上に繋がるだけでなく、万が一、訴訟に発展した際も企業として取るべき措置を講じたことを主張・立証することができます。

ヒアリングは広範囲に行う

事実確認の調査時に行うヒアリングは、できる限り広範囲に行うことが重要です。被害者の意見を真摯に聞くことは大切である一方、被害者の主張が事実と異なる可能性も考えられます。行為者側の意見や、周囲の第三者たちの意見も必ず聞くようにしましょう。事実認定は客観的に納得できる結論であることが重要であるため、中立の立場で事実確認を進める姿勢が求められます。

関係者のプライバシーへの配慮を欠かさない

パワハラ対応を進める過程では、関係者のプライバシーへの配慮が欠かせません。ヒアリング資料には個人を特定できる情報が載っているため、たとえ裁判であっても資料の公開には細心の注意を払いましょう。特に、聴取した情報を行為者に見せるといった行為は思わぬ二次災害を招きかねないため、注意が必要です。資料を誰かに公開する場合は、必ず本人たちの許可を得ることが重要です。

まとめ|パワハラ対応は弁護士に相談を

パワハラの相談を受けた場合、事実の調査と認定を中立的に行い、被害者へのフォローや行為者への処分を迅速に行う必要があります。また、社内規定の整備や相談窓口の設置などを進めることで企業側の対応姿勢を示し、パワハラの予防に努めることが重要です。

パワハラの対応は、自社内の都合に影響されず客観的な判断を行うことできる弁護士などの専門家に第三者視点の意見やアドバイスを求めることをおすすめします。虎ノ門法律経済事務所和歌山支店では、企業人事、労務問題に関する経験が豊富な弁護士が、予防策の検討から訴訟対応まで徹底的にサポートいたします。パワハラ対応にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
初回相談料60分無料 TEL:073-488-1026 営業時間 9:00〜18:00/土日祝 応相談

ご相談の流れはこちら

初回相談料60分無料 TEL:073-488-1026 営業時間 9:00〜18:00/土日祝 応相談