協調性のない社員・業務命令に従わない社員への対応

文責:弁護士 野上 晶平

社内で、もめ事を起こしたり、業務命令を無視する部下が存在すると、職場環境が悪化するだけでなく、企業の生産性にも大きな影響を与えます。このような協調性のない社員への対応は【遅刻・無断欠席をする社員】と同じく、まずは当該社員にヒアリングをし、改善を促すことから始めましょう。業務命令を無視する部下への適切な対応は、健全な職場環境を維持するために非常に重要です。

1.協調性のない社員・業務命令を無視する部下を放置するリスク

社内に協調性のない社員や業務命令を無視する部下を放置することは、企業にとって様々なリスクを生じさせます。まず、職場の雰囲気が悪化し、他の社員のモチベーションが低下する可能性があります。そして、業務の進行に支障をきたし、納期遅延や品質低下といった問題が発生することもあるでしょう。また、このような状況を放置することで、経営者の管理能力に対する不信感が広がり、優秀な人材の流出につながることも考えられます。

特に中小企業においては、一人の問題社員が与える影響は大きく、放置すればするほど職場全体の生産性が低下し、最終的には企業の業績にも悪影響を及ぼします。さらに、業務命令を無視する行為を黙認することで、「この会社では業務命令に従わなくても問題ない」という誤ったメッセージを他の社員に与えてしまう危険性もあります。したがって、問題が小さいうちに適切な対応をとることが非常に重要です。

2.企業としての対応方法

協調性のない社員や業務命令を無視する部下に対しては、段階的かつ計画的な対応が必要です。まずは当該社員との対話を通じて問題の根本原因を探り、改善の糸口を見つけることが大切です。そして、状況に応じて適切な措置を講じていくことで、問題の解決を図ることができます。しかし、対応を誤ると逆効果になったり、法的トラブルに発展したりする可能性もあるため、慎重に進める必要があります。

以下では、具体的な対応方法について詳しく説明していきます。それぞれの手順を踏むことで、問題社員への対応をより効果的に進めることができるでしょう。なお、対応の際には常に記録を残し、後々のトラブルに備えることも重要です。

①パワハラと主張されないように注意

上司に口答えをしたり、命令を無視するような社員は、「自分は正しく、上司が間違っている」と考えていることが多いです。

そこで、感情的になって叱りつけてしまうとパワーハラスメントであると主張され、かえって問題を複雑化させてしまう危険性があります。パワーハラスメントは現在、法律でも防止措置が義務付けられています。ですから、まずは、当該社員にどうしてこのような行為をするのかを確認するのはもちろんのこと周りにいる関係者にも事情聴取を行い、事実関係を確定させましょう。

②具体的に説明する

事実関係がはっきりとし、注意指導をするときには、「あなたのこういう態度が問題だ」といった抽象的な指摘ではなく、「▲月■日、会議の場で●●さんに対して『○○○』と言った」「上司の『○○○(具体的な業務命令の内容)』という業務命令に背いた」など当該社員の問題行為を具体的に挙げて、さらにその行動がどのような悪影響を及ぼしているのかを詳細に説明することが重要です。さらに、これらのやり取りや事実確認の過程を文書化し、後のトラブル回避につなげるための証拠とすることで、企業としての説得力を高めることができます。

それでも、改善されないときは【遅刻・無断欠席をする社員】にある項目『証拠③【注意指導】』と同じく、文書やメールでの注意指導もしつつ、軽い懲戒処分も考慮する必要があります。

③注意指導書の交付

口頭での注意指導を行っても改善が見られない場合には、次のステップとして注意指導書」や「業務改善命令書」といった書面を交付することが効果的です。これは、口頭での注意よりも重い警告と受け止められ、社員に事態の深刻さを認識させる効果が期待できます。注意指導書には、問題となる行為や言動を具体的に記載し、なぜそれが問題なのか、どのような改善を求めるのかを明確に示すことが重要です。また、改善されない場合にはさらなる措置を検討する可能性があることも記載しておくと良いでしょう。

注意指導書を交付する際には、対面で内容を説明し、当該社員に署名または記名押印をしてもらうことが望ましいです。しかし、社員が署名を拒否する場合も考えられます。そのような場合には、交付日時や場所、立会人などを記録し、交付の事実を証明できるようにしておくことが大切です。そして、交付した注意指導書のコピーは必ず保管し、後日のトラブルに備えましょう。

④配置転換等

注意指導を繰り返しても改善が見られない場合、当該社員の適性や能力を考慮して配置転換を検討することも一つの選択肢です。業務命令に従わない原因が、現在の業務内容や職場環境との相性の悪さにある可能性もあるからです。そのため、本人の適性に合った部署への異動や、より明確な指示系統のある部署への移動などを検討してみましょう。

配置転換を行う際には、懲罰的な印象を与えないよう、本人の成長や会社全体の業務効率向上を目的としていることを丁寧に説明することが重要です。また、配置転換後も定期的に面談を行い、状況の改善を確認することで、問題の再発防止に努めることができます。なお、配置転換は就業規則や雇用契約に基づいて行う必要がありますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

⑤最終手段としての懲戒処分

注意指導や配置転換などの対応を行っても改善が見られない場合、最終手段として懲戒処分を検討する必要があります。懲戒処分には、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇など様々な種類があります。どの処分を選択するかは、問題行為の内容や頻度、これまでの対応経緯などを総合的に考慮して決定すべきでしょう。

注釈:譴責(けんせき)とは、懲戒処分の一つで、始末書を提出させて将来を戒める処分です。戒告よりやや重いとされる場合もありますが、企業によって定義は異なります。)

懲戒処分を行う際には、就業規則に定められた手続きを厳格に守ることが不可欠です。また、処分の内容が問題行為に対して均衡を失していないか、同様の事例と比較して不当に重くないかなどを慎重に検討する必要があります。懲戒処分は従業員にとって不利益な処分であるため、後日法的紛争に発展するリスクも高いです。そのため、弁護士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

3.協調性のない社員・業務命令を無視する部下に懲戒処分を行う際の注意点

協調性のない社員や業務命令を無視する部下に懲戒処分を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、就業規則に懲戒事由として明確に規定されているかを確認することが必要です。「業務命令違反」や「職場秩序を乱す行為」などの規定がなければ、懲戒処分の根拠が弱くなってしまいます。また、業務命令自体が合理的かつ適法なものであったかどうかも重要なポイントです。

次に、段階的な対応を行ったかも重要な判断基準となります。いきなり重い懲戒処分を行うのではなく、口頭での注意指導から始め、文書による注意、軽い懲戒処分へと段階的に対応することで、処分の相当性が認められやすくなります。さらに、同じような事例に対する過去の処分との均衡性も考慮する必要があります。特定の社員だけを厳しく処分することは、不当な差別として処分の無効事由になり得るからです。

そして、何よりも重要なのは、一連の対応プロセスを文書で記録しておくことです。いつ、誰が、どのような注意指導を行い、当該社員がどのように応じたかなどの経緯を詳細に記録しておくことで、後日の紛争に備えることができます。懲戒処分を行う際には、これらの点に十分注意し、適正な手続きを踏むことが求められます。

4.業務命令に従わない社員に関する裁判例

実際に、業務命令に従わない社員への懲戒処分が認められるには、就業規則などに当該業務命令に服するべき旨の規定があり、かつ、当該規定内容が合理的なものでなければなりませんので、十分に確認しておきましょう。

では、どのような場合に業務命令が「合理的」と判断され、また、どのような場合に懲戒処分が有効または無効と判断されるのでしょうか。ここでは、参考となる過去の裁判例を2つご紹介します。

懲戒処分を有効とした裁判例(電電公社帯広局事件・最高裁判所 昭和61年3月13日)

精密検査受診命令を拒否した社員の懲戒処分(戒告)有効性が争われた事例です。

【裁判要旨】

健康管理上の措置が必要であると認められる職員に対し二週間の入院を要する
頸肩腕症候群総合精密検診の受診を命ずる業務命令を発した場合において、
右職員に労働契約上その健康回復を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務があり、
右検診が疾病の治癒回復という目的との関係で合理性ないし相当性を有するなど判示の事情があるときは、
業務命令は有効であり、これに違反したことを理由とする戒告処分は適法である。

(全文は裁判所のホームページよりご覧いただけます。)

 

【ポイント】

  • 健康管理規程を定めており、その規程には「健康管理従事者の指示もしくは指導を受けたときは、これを誠実に守らなければならない」など、職員の遵守すべき義務を明らかにしていました
  • 就業規則・健康管理規定の内容は合理的なものというべきであった。
  • 健康管理従事者による指示の具体的内容も健康の早期回復という目的に照らし合理性ないし相当性を肯定し得る内容の指示であった。

※当該社員が、受診拒否の意向を有しており、業務命令発出という形にまで発展したことを重視し、非公開で団体交渉が行われたが、当該社員を含む12名の職員が立ち入り、退去指示にも従わなかった。このときに約10分間、職場を離脱したことも処分の対象となっています。

懲戒処分を無効とした裁判例(富士重工業事件・最高裁判所 昭和52年12月13日)

就業時間中に、「原水爆禁止運動を行った社員に関する調査」に協力しなかった社員に対しての懲戒処分(譴責)の有効性が争われた事例です。

【裁判要旨】

労働者は、使用者の行う他の労働者の企業秩序違反事件の調査について、
これに協力することがその職責に照らし職務内容となつていると認められる場合でないか、
又は調査対象である違反行為の性質・内容右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、
より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが
労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合でない限り、協力義務を負わない

(全文は裁判所のホームページよりご覧いただけます。)

【ポイント】

  • 当該社員が、他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者(調査に協力することがその職務の内容となっている者)では無かった
  • 調査の質問内容が、原水爆禁止運動を行った社員Dによって、「職務執行を妨害しなかったか」など、社員Dの就業規則違反の事実を聞き出すものでなく、原水爆禁止運動の組織、活動状況等を聞き出そうとしたものであった。

5.まとめ

協調性のない社員への対応は、慎重に事実確認をしなければなりません。そして、業務命令に従わない社員を懲戒処分とするためには、当該業務命令が合理的なものでなければなりません。また、段階的な対応を行い、各ステップでの記録を残すことも非常に重要です。さらに、業務命令が合理的であるかの判断は、第三者の専門家に確認してもらうことをおすすめします。このように適切な対応を行うことで、協調性のない社員や業務命令を無視する部下の問題行動を改善し、健全な職場環境を維持することができるでしょう。早期対応が問題解決の鍵となりますので、協調性のない社員・業務命令に従わない社員でお困りでしたら、当事務所までご相談ください。

6.問題社員対応でお困りでしたら当事務所までご相談ください

当事務所では初回相談料を無料とさせていただいています。企業経営者の皆様が直面している問題を一緒に解決し、リスクを回避するためのサポートを行っています。以下のようなお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。

「協調性のない社員や業務命令を無視する部下への対応に困っている」

「解雇した元社員から解雇無効の訴えを起こされている」

「懲戒処分のために就業規則を見直したい」

「問題社員への対応が適法かどうか確認したい」

企業経営において、こうした労務問題は放置すればするほど深刻化する傾向があります。早期に専門家の助言を受けることで、より円滑な解決が可能です。少しでも顧問弁護士がお力になれることがございましたら、まずはお気軽にご相談・ご予約ください。電話・メール・Chatworkにてご予約を受け付けております。企業の未来のために、一歩踏み出してみませんか。

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