医療費未払いを解決!弁護士が教える請求の方法

医療費未払いの現状と法的対応

医療費未払いが病院・クリニックに与える経済的影響

医療費の未払いは、病院やクリニックの経営に深刻な影響を及ぼす重大な経営課題となっています。未収金の増加は、医療機関の財務状況を著しく悪化させ、適切な医療サービスの提供や設備投資に支障をきたす可能性があります。特に中小規模の医療機関においては、わずかな未払い額の累積が経営を圧迫することがあり、給与や設備投資等の資金繰りを脅かす深刻な課題となっています。

未払い医療費の回収における法的リスク

医療費の未払いに対して安易な対応をすることは、法的リスクを伴う可能性があります。未払い患者への対応には、個人情報保護法や債権回収に関する各種法律を遵守しつつ、適切な法的手続きを踏む必要があります。例えば、不適切な督促や過度な取り立て行為は、無用なトラブルを引き起こし、最悪の場合、法的責任を問われる可能性があります。

また、未払い医療費の回収においては、時効や消滅時効などの法的制約を正確に理解することが重要です。いつまでも請求をせずに放置していると、回収できなくなってしまうこともあります。そのため、弁護士等の専門家に相談し、適切な対応を立てることが極めて重要となります。

効果的な医療費回収の具体的方法

督促状の作成と送付

医療費の未払いが発生した場合、まずは患者に対して督促状を送付することが重要です。督促状は、患者に未払いがある事実を通知し、一定の期限内に支払いを促す文書です。督促状には、未払い金額、支払期限、支配方法、支払いがかった場合の今後の対応(法的措置の可能性)を明記します。単なる請求書の再送付ではなく、法的根拠に基づいた丁寧かつ毅然とした文面で作成しましょう。また、内容証明郵便を利用することで、後の法的手続きにおける証拠として活用できますが、費用は普通郵便の10倍以上かかってしまうので、悪質な患者でない限りはまずは普通郵便での送付でも大丈夫です。

支払督促や訴訟等の法的手続きによる回収

督促状による任意の支払いが見込めない場合、法的手続きによる回収を検討する必要があります。主な法的手続きには、支払督促と訴訟の2つの方法があります。

支払督促は、裁判所を通じて未払い金の支払いを求める比較的簡易な法的手続きです。具体的には、簡易裁判所に対して支払督促の申立てを行い、相手方に支払いを促す法的文書を送付します。この手続きは、訴訟に比べて手続きが簡略で、費用も比較的低額に抑えられるメリットがあります(訴えの提起の半額の手数料で、請求する金額によって変動します。詳しくは裁判所のHPをご覧ください。)。ただし、相手方が支払督促に対し異議申し立てをした場合、事件の管轄は地方裁判所(訴訟)へ移り、追加の手数料・郵券、訴状に代わる準備書面等を提出する必要が出てくるので注意が必要です。

 

一方、訴訟は、支払督促で解決できない場合に選択される、より本格的な法的手続きです。民事訴訟を提起することで、裁判所の判決に基づいて未払い金の回収を図ることができます。ただし、訴訟には多くの時間と費用がかかる上、相手方に財産が全くなければ、勝訴判決を得ても回収できないおそれもあります。そのため、未払い金額や相手方の状況を慎重に検討してから、仮差押え・訴訟提起を実行する必要があります。。

 

これらの手続きは専門的な知識が求められるため、弁護士への相談することをおすすめします。

医療費未払いを防止のための対策

連帯保証人制度の活用

医療費未払いを未然に防ぐための重要な方策の一つが、連帯保証人制度の活用です。この制度は、患者の支払いが滞った際に、連帯保証人が代わって未払い医療費を支払う責任を負う仕組みです。特に高額な医療費が予想される入院治療や長期療養が必要な場合に効果的です。また、患者が亡くなった場合に通常であれば相続人に未払いの医療費を請求できますが、相続放棄をされると請求できなくなってしまうので、死亡リスクがある患者に対しても有効です。

 

連帯保証人制度は2020年に民法が改正されたことも相まって、導入する際に以下の事項に気を配らなければならないため、一度、弁護士に連帯保証契約書を確認してもらいましょう。

 

  • 連帯保証人の極度額の設定

    将来発生する不特定の医療費債務を対象としている場合、その契約は根保証契約(※)に該当します。根保証契約の保証人が法人でない場合は極度額を定めなければ効力が生じません(民法第465条の2)。
    ※根保証契約:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約
  • 連帯保証人への情報提供義務(民法第465条の10

  • 期限の利益を喪失したときの通知義務(民法第458条の3

    「期限の利益を喪失したとき」とは、「分割での支払い予定を守れなくなり、残りの医療費を全額一度に支払わなければならなくなること」を言います。利益の喪失を知った時から2ヶ月以内に連帯保証人に通知をする必要があります。

入院保証金制度の導入

入院保証金制度は、医療費未払いリスクを低減するもう一つの効果的な対策です。この制度は、患者が入院時に一定額の保証金を事前に預託することで、医療機関の財務リスクを軽減する仕組みです。

入院保証金制度の運用の流れは次のようになります。

 

  1. 予想される医療費に応じて保証金額を設定する
  2. 入院時に一定額の保証金を預託してもらう
  3. 治療終了後、保証金が入院費用を上回る場合は返金、下回る場合は差額を請求する

 

患者から預託される金銭(いわゆる「預り金」)については、厚生労働省の通達「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」で以下のように言及されています。

保険医療機関が患者から「預り金」を求める場合にあっては、当該保険医療機関は、患者側への十分な情報提供、同意の確認や内容、金額、精算方法等の明示などの適正な手続を確保すること。

 

そのため、入院保証金制度を導入(契約書等作成)する際には、

  • 十分な情報提供
  • 同意の確認
  • 金額
  • 精算方法

が明記されているかをしっかりと確認する必要があります。

医療費回収における法的注意点

応召義務と未払い医療費の関係

医療従事者には、応召義務という重要な法的義務があります。これは、医師法第19条第1項に規定されており、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とされています。さらに、厚生省医務局長通知(昭和24910日付医発第752号)では「正当な事由」に該当しないとされた例に「医業報酬が不払であっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできない。」とあります。

 

しかし、これはあくまでも、緊急の治療が必要な患者に対してと考えられ、緊急性もなく未払いが長期化しているような場合には「正当な事由」に該当する場合があります。

 

「正当な事由」の判断基準は明確にはありません。そのため、これらの判断を誤ると、行政処分の対象となったり、損害賠償請求をされるおそれもあるため、慎重に対応する必要があります。

医療費の時効と注意点

医療費請求権には、5年の消滅時効が適用されます。この期間を過ぎると、法的に請求権を失ってしまうため、迅速かつ適切な対応が極めて重要となります。また、時効の完成猶予措置(督促状の送付等)、更新措置(裁判上の請求)を講じることで、請求権を維持することができます。

医療費の未払いトラブルに関して当事務所がサポートできること

未払い医療費に関する法律相談

医療費未払いの問題は、複雑な法的課題を含むため、専門的な法律相談が極めて重要です。当事務所では、医療機関の皆様が直面する未払い医療費の問題に対して、未払い医療費の回収戦略、法的リスクの評価、適切な法的手続きの選択といったリーガルサポートを提供しています。

督促状や内容証明郵便の作成

効果的な未払い医療費の回収には、適切に作成された文書となっていることが重要です。当事務所では、専門的な知識と経験に基づき、説得力のある督促状や内容証明郵便を作成いたします。単なる請求書の再送付ではなく、法的根拠に基づいた、相手方に対応を促す文書を作成します。

医療費回収のための訴訟代理

任意の回収が困難な場合、民事訴訟による法的回収が必要となります。当事務所では、医療費未払い事案における包括的な訴訟代理サービスを提供しています。経験豊富な弁護士が、支払督促から本訴訟まで、クライアントの利益を最大限に守る法的対応を行います。

 

【訴訟代理のサポート内容例】

  • 支払督促申立書や訴状の作成と裁判所への提出
  • 裁判所への出廷と追加の主張
  • 和解交渉

医療費未払いトラブルを防ぐ契約書や制度設計のアドバイス

未払いトラブルを未然に防ぐためには、事前の適切な制度設計が重要です。当事務所では、医療機関の特性に応じた契約書の作成や、未払い防止のための制度設計についての専門的なアドバイスを提供しています。

 

【対応アドバイスの内容例】

  • 患者との契約書の法的レビュー
  • 連帯保証人制度の適切な設計
  • 入院保証金制度の構築支援
  • リスク管理のための法的アドバイス

まとめ

医療費の未払い問題は、医療機関の経営を圧迫する深刻な課題です。適切な初動対応や法的手続き、そして防止策の整備が、未払いトラブルを最小限に抑えるカギとなります。特に、患者との契約内容や保証制度の設計には慎重な検討が必要です。すべてを医療機関内部で解決しようとせず、弁護士などの専門家に相談することで、迅速かつ的確な対応が可能となります。当事務所では、医療費未払いに関する法律相談や訴訟代理、制度設計のアドバイスまで包括的なサポートを提供しております。医療費未払いにお悩みの方は、初回相談料は無料になっておりますので、お気軽に当事務所までご相談ください。

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