退職代行を使われた時の正しい対処法と注意点
文責:弁護士 野上 晶平退職代行とは
退職代行とは、従業員本人に代わって会社に退職の意思を伝え、退職手続きを進めるサービスのことです。従来は従業員が直接上司に退職の意向を伝え、退職日の調整や業務引継ぎを行うのが一般的でした。しかし、近年は退職代行サービスを利用して、会社との直接的なやり取りを避けて退職する従業員が増加しています。企業側にとっては、ある日突然退職代行業者から連絡が入るため、初めて経験する場合は対応に戸惑うことも少なくありません。しかし、退職代行を使われた場面でも、法的なルールと基本的な手順を押さえておけば、落ち着いて対応することは十分可能です。
退職代行サービスの仕組みと特徴
退職代行サービスは、従業員が業者に依頼すると、業者が会社に対して退職の意思を伝達します。その際、従業員本人は会社と直接連絡を取らないことが一般的です。したがって、会社側は退職代行業者を窓口として、退職に関する各種手続きを進めることになります。このとき、退職代行業者が「単に退職の意思を伝えるだけ」なのか、「未払い残業代の請求や退職金、損害賠償などの交渉まで行おうとしているのか」によって、法的な評価が大きく変わってくる点に注意が必要です。
料金は業者によって異なりますが、おおむね2万円から5万円程度が相場とされています。依頼者である従業員にとっては、退職を言い出しにくい状況から解放され、精神的な負担を軽減できる点がメリットとなっています。
退職代行サービスが増加している背景
退職代行サービスの利用が増加している背景には、いくつかの要因があります。まず、職場におけるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの問題により、上司に直接退職を言い出せない従業員が存在することが挙げられます。また、慢性的な人手不足のため、退職を申し出ても強く引き止められることを恐れる従業員もいます。さらに、インターネットやSNSの普及により、退職代行サービスの存在が広く知られるようになったこと、そして転職が一般的になり退職へのハードルが下がったことも影響しています。加えて、働き方や価値観の多様化に伴い、従業員が自身の権利を主張しやすくなったという社会的な変化も背景にあると考えられます。
退職代行業者の3つの種類と法的な位置付け
退職代行を行う業者は、その法的な位置付けによって大きく3つに分類されます。それぞれ実施できる業務の範囲が異なるため、企業側は業者の種類を正確に把握した上で対応することが重要です。
- 民間の退職代行サービス
民間の退職代行サービスは、営利企業として退職代行事業を行っている業者です。これらの業者ができることは、従業員本人に代わって会社に退職の意思を伝え、退職届を提出することに限られます。つまり、単なる「使者」としての役割のみを担うことになります。民間業者が退職日の調整、退職金の交渉、有給休暇の取得交渉など、会社との間で条件面について交渉することは、弁護士法第72条で禁止されている「非弁行為」に該当し、違法となります。したがって、民間業者から条件交渉を持ちかけられた場合、会社側はこれに応じる必要はありません。ただし、業者を通じて従業員の意向を確認することは可能ですので、円滑な退職手続きのために協力を求めることは検討できます。 - 弁護士による退職代行
弁護士による退職代行は、弁護士が従業員の正式な代理人として退職手続きを行うものです。弁護士は法律の専門家として、退職の意思表示だけでなく、退職日の調整、退職金の交渉、有給休暇の取得に関する交渉、未払い賃金の請求など、あらゆる法律事務を適法に行うことができます。また、労働トラブルが訴訟に発展した場合には、従業員の代理人として裁判所に出廷することも可能です。企業側としては、弁護士が代理人として就いた場合、法的根拠に基づいた主張がなされることが予想されるため、会社側も顧問弁護士に相談するなど、慎重な対応が求められます。なお、弁護士が退職代行を行う場合、委任契約書や委任状などの書面が整備されているのが通常です。 - 退職代行ユニオン(労働組合)
ユニオンとは、会社に労働組合がない従業員が個人で加入できる社外の労働組合のことです。ユニオン(労働組合)には、団体交渉を行う権限がありますので、賃金や労働条件について「団体交渉申し入れ」という形で会社に要求をしてくることがあります。また、労働組合からの団体交渉の申し入れを会社が正当な理由なく拒否することは、不当労働行為として労働委員会に救済を申し立てられる可能性がありますので、注意が必要です。ただし、実態として本当に労働組合法上の要件を満たす「労働組合」といえるのか、組合員との関係はどうなっているのか、といった点は慎重な確認が必要です。なお、労働組合は弁護士とは異なり、交渉が決裂して訴訟になった場合に代理人として法廷に立つことはできません。
退職代行を使われた時に企業側が対応すべき8つのステップ
1. 退職代行業者の身元と交渉権限を確認する
退職代行業者から連絡が入ったら、まずは焦らずに相手の身元を確認してください。相手が「弁護士」なのか、「労働組合」なのか、それとも「民間の代行業者」なのかによって、会社の対応方針が変わります。特に民間業者の場合、交渉権限を持たないため、退職条件などの交渉を求められても応じる義務はありません。
具体的な確認事項としては、民間業者の場合は、業者の名称・担当者氏名・連絡先を、弁護士事務所であれば、担当の弁護士名・所属弁護士会・弁護士登録番号を、労働組合であれば組合名称と代表者を聞き取ります。特に、電話での連絡の場合、相手の素性を正確に把握することが難しいため、こちらから折り返し連絡する旨を伝え、業者の公式ウェブサイトや弁護士会のデータベースなどで実在を確認することが重要です。弁護士や労働組合を装った詐欺や嫌がらせの可能性もゼロではありませんので、慎重に確認作業を行いましょう。身元確認ができたら、前述の3つの分類のいずれに該当するかを判断し、その業者にどこまでの交渉権限があるのかを把握します。これにより、その後の対応方針を適切に決定することができます。
2. 従業員本人の退職意思を確認する
業者の身元確認と並行して、従業員本人が実際に退職を希望しているのか、本当に業者に依頼したのかを確認する必要があります。極めて稀なケースではありますが、第三者による嫌がらせや詐欺の可能性も否定できません。したがって、退職代行業者に対して、従業員本人からの委任状や身分証明書のコピーの提示を求めましょう。弁護士であれば委任契約書、労働組合であれば組合員証や加入証明書などを保有しているはずです。これらの書類で本人確認ができれば、従業員本人の意思に基づく退職の申し出であると判断できます。もし書類の提示が得られない場合は、従業員本人に直接メールや書面で連絡を取り、退職の意思を確認することも検討してください。ただし、退職代行を利用している時点で、本人が会社からの連絡に応じる可能性は低いことを理解しておく必要があります。
3. 従業員の雇用形態を確認する
従業員の雇用形態によって、退職の申し出に対する会社の対応が変わってきます。期間の定めのない雇用契約(正社員など)の場合、民法第627条第1項により、従業員はいつでも退職の申し入れができ、申し入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了します。したがって、会社側は原則として退職を拒否することはできません。
一方、有期雇用契約の場合は、契約期間が満了するまで原則として退職することはできず、会社側は退職の申し出に応じる義務はありません。ただし、民法第628条により、病気や家族の介護などの「やむを得ない事由」がある場合には、有期雇用契約であっても即座に契約を解除できるとされています。さらに、会社側にパワーハラスメントや賃金未払いなどの責任がある場合も、やむを得ない事由に該当する可能性があります。
なお、有期雇用契約であっても、労働基準法第137条により、契約期間が1年を超える場合には、1年経過後であればいつでも退職の申し入れができるとされています。この場合、会社側は退職を拒否することができませんので注意が必要です。
そのため、有期雇用の従業員から退職の申し出があった場合は、契約期間の長さ、契約開始からの経過期間、やむを得ない事由の有無について慎重に確認することが求められます。
4. 退職届の提出を依頼と回答書を送付する
法律上、退職届の提出は必須ではありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも、書面による退職届の提出を求めることが重要です。退職届があれば、退職の意思表示があったことの証拠となり、退職日や退職理由についての認識の齟齬を防ぐことができます。会社に所定の退職届フォーマットがある場合は、それを退職代行業者経由で従業員に送付し、記入・返送を依頼しましょう。また、会社側からも退職の申し出を受理した旨を記載した回答書を作成し、退職代行業者または従業員本人に送付することが望ましいです。回答書には、退職の申し出を受理したこと、今後の手続きの流れ、必要書類の提出依頼、貸与品の返却依頼などを明記します。これらの書面のやり取りは、適切な対応を行っていることの証拠となります。
5. 有給休暇の残日数と取得希望の確認をする
従業員に未消化の年次有給休暇が残っている場合、労働基準法に基づき、従業員には有給休暇を取得する権利があります。退職代行を利用する従業員の多くは、残っている有給休暇を全て消化した上で退職することを希望します。したがって、会社側はまず当該従業員の有給休暇の残日数を正確に把握する必要があります。従業員が有給休暇の取得を希望した場合、会社は原則としてこれを認めなければなりません。有給休暇の取得を不当に拒否した場合、労働基準法違反となり、罰則の対象となる可能性があります。なお、有給休暇の残日数が10日以上ある場合(完全週休二日制を想定しています。)、有給休暇を消化することで実質的に即日退職に近い形となり、業務引き継ぎの指示命令ができないまま退職されてしまう恐れがあります。会社としては、このような状況を想定した上で、後任者の選定や業務の引継ぎ計画を速やかに立てることが重要です。
6.業務引継ぎの方法・範囲について協議・要請する
業務の引継ぎは、後任者がスムーズに業務を遂行するために重要です。したがって、退職する従業員に対して、可能な範囲での引継ぎを依頼することは正当な行為です。ただし、退職代行を利用している従業員は、会社に出社することを避けている場合がほとんどです。そのため、対面での引継ぎを強く求めても、実現する可能性は低いと考えるべきです。そこで、会社側は「現実的に期待できる協力義務」として、最低限の引継ぎを求める必要があります。具体的には、出社を強要するのではなく、業務の進捗状況をまとめたメモの作成・送付、取引先の連絡先リストの提供、PCや業務システムへのログインパスワードの開示、データの保存場所の共有などを、退職代行業者を通じて要請します。なお、引継ぎを一切拒否したことにより会社に損害が発生した場合、従業員に損害賠償を請求できる可能性もありますが、実務上は立証が困難なケースが多いため、過度な期待は禁物です。
7. 退職日の最終決定をする
退職日の決定は、従業員の雇用形態や有給休暇の残日数、業務の引継ぎ状況などを総合的に考慮して行います。期間の定めのない雇用契約の場合、民法の規定により、退職の申し入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了します。したがって、退職代行業者から連絡があった日を起算日として、最短で2週間後が退職日となります。ただし、労使双方が合意すれば、2週間を待たずに即日退職とすることや申し出から2週間以上先を退職日に設定することも可能です。
また、有給休暇が残っている場合、従業員が有給休暇を全て消化することで、実質的に出社しないまま退職日を迎えることになります。会社としては、業務の引継ぎや後任者の手配、社会保険料の控除月などを考慮し、可能であれば退職日を調整することも検討できますが、従業員側が応じない場合は、法律上の最短期間である2週間後を退職日とせざるを得ません。退職日が確定したら、退職代行業者および従業員本人に書面で通知し、双方の認識を一致させておくことが重要です。
8. 貸与品の返還方法と期限を指定する
会社から従業員に貸与している物品は、退職時に全て返還してもらう必要があります。貸与品としては、パソコン、スマートフォン、タブレット端末、USBメモリ、社員証、入館証、名刺、制服、作業着、社用車の鍵、オフィスやロッカーの鍵、業務用の書籍や資料などが考えられます。これらの中でも、特にパソコンやスマートフォン、USBメモリなどの電子機器には、顧客情報や機密情報が保存されている可能性があります。そのため、情報セキュリティと実務リスクの観点から、従業員が出社しない、連絡も退職代行業者経由となった時点で、速やかに返還を求めることが望ましいです。退職日まで従業員に保有させておく合理性は乏しく、むしろ情報漏洩のリスクが高まります。したがって、貸与品のリストを作成し、退職代行業者を通じて返還方法と期限を明確に伝えましょう。返還方法としては、従業員本人が会社に持参することは期待できないため、宅配便での郵送を依頼するのが一般的です。送料については、特段の取り決めがない場合、会社負担(着払いで返送してもらう)としておいたほうが返却がスムーズに進みます。また、返却キット(梱包資材と着払い伝票)を本人宅へ発送し、そこに梱包して返送してもらったり、代理人や家族が会社に持参してもらうなどの方法もあります。最後に、貸与品が返還されたら、リストと照合して確認し、不足がないか確認することも忘れずに行いましょう。
なお、貸与品の返還と併せて、退職時の賃金精算についても注意が必要です。労働基準法第23条第1項により、従業員が退職する場合において、退職者から請求があったときは、使用者は7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないとされています。なお、同条第2項には、争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならないとされています。したがって、退職代行を通じて賃金や金品の返還請求があった場合には、速やかに対応することが重要です。対応が遅れると労働基準法違反となり、労働基準監督署から指導を受けるだけでなく、従業員側から遅延損害金を請求される可能性もありますので、退職後の精算手続きは迅速に行いましょう。
退職代行を使われた場合に企業が注意すべきポイント
民間の退職代行サービスとは交渉しない
前述のとおり、民間の退職代行サービス業者は、従業員の代わりに退職の意思を伝えることしかできません。退職日の調整、未払い残業代・退職金の交渉、有給休暇の取得に関する交渉など、会社との間で条件面について交渉する行為は、弁護士法第72条で禁止されている「非弁行為」に該当します。したがって、民間業者から条件交渉を持ちかけられても、会社側はこれに応じる必要はありません。むしろ、非弁行為に該当する可能性があることを業者に指摘し、「交渉事項がある場合は、ご本人から直接ご連絡いただくか、法的な代理人(弁護士)を通じてお申し入れください」と交渉には応じられない旨を明確に伝えるべきです。ただし、業者を完全に無視するのではなく、「条件交渉には応じられないが、従業員本人の意向を確認することは可能」というスタンスで対応することが現実的です。また、民間業者が執拗に交渉を迫ってくる場合は、会社側も弁護士に相談し、適切な対応を検討する必要があります。
感情的な対応や無視はしない
退職代行業者から突然連絡が来ると、会社側としては驚きや怒りを感じることもあるでしょう。特に、業務の繁忙期であったり、重要なプロジェクトの担当者が退職を申し出たりした場合、感情的になることも理解できます。しかし、退職代行業者や従業員本人に対して、罵声を浴びせたり、退職を認めないと強硬に主張したりすることは避けなければなりません。なぜなら、退職代行業者は通常、トラブル防止のために通話内容を録音しているからです。このような対応は、「退職妨害」や「ハラスメント」とみなされ、損害賠償請求やSNSでの悪評拡散などのトラブルに発展する恐れがあります。したがって、どれほど不本意な状況であっても、冷静かつ丁寧な対応を心がけることが重要です。一方で、退職代行からの連絡を無視することも避けるべきです。連絡を無視しても、法律上は退職の申し入れから2週間で雇用契約は終了してしまいます。それどころか、離職票の発行が遅れることで労働基準監督署から指導を受けたり、従業員から訴えられたりする可能性もあります。たとえ、納得できない部分があったとしても、必要な手続きは粛々と進めることが賢明です。
退職代行を使われないための予防策
退職代行を使われたときの対処ももちろん大切ですが、そもそも「退職代行を使わざるを得ない」と従業員に感じさせない職場づくりは、もっと重要な経営課題です。ここでは、退職代行を使われないための予防策を3つの観点から整理します。
社内コミュニケーションの活性化と労働環境の見直し
従業員が退職代行を利用する背景には、上司や同僚とのコミュニケーション不足や、職場の雰囲気の悪さがあることが少なくありません。日頃から従業員と良好な関係を築き、何でも相談しやすい環境を整えることが、退職代行の利用を防ぐ第一歩となります。具体的には、定期的な個別面談を実施し、従業員の悩みや不安を聞き取る機会を設けることが有効です。また、残業時間・休日取得・業務負荷などのデータを定期的に確認し、特定の部署や個人に負荷が集中していないかを点検することも有効です。問題が数字として見える形になると、経営者としても具体的な改善策を検討しやすくなります。
パワハラ・セクハラ等のハラスメント防止措置の徹底
退職代行の利用理由として、「パワハラがつらくて、もう直接話したくない」「セクハラをされたが、社内で相談しづらい」といった声もよく挙げられます。そのため、
- 管理職向けのハラスメント研修の定期的な実施
- ハラスメント相談窓口の設置
- ハラスメントに関する相談があった場合の調査・対応の整備
など、ハラスメント防止措置を運用することが不可欠です。単に就業規則に条文を入れるだけではなく、「実際にどのように運用されているか」が従業員の安心感を左右します。
従業員が利用しやすい相談窓口の設置と周知
従業員が職場での悩みや不満を抱えていても、社内の人間には相談しにくいと感じることがあります。特に、相談内容が上司に関することであったり、人間関係のトラブルであったりする場合、誰に相談したらいいのか困ってしまう場合があります。その様な場合に備えて、直属の上司以外に相談できる窓口を設置することも有効です。また、従業員が抱えている悩みは仕事のことだけとは限りません。家庭内の問題(離婚・相続)や借金など周りに相談できずに抱え込んでしまい、体調を崩したり仕事に集中できなくなったりして退職を決断する方もいらっしゃいます。そのため、企業としては、従業員が安心して相談できる窓口を設置することが重要です。一つの方法として、社外の産業カウンセラーとの連携や弁護士事務所とEAP(従業員支援プログラム)を契約し、従業員が直接相談できる外部相談窓口を設けることが考えられます。外部の窓口であれば、会社に知られることなく相談できるため、従業員にとって心理的なハードルが下がります。また、相談窓口の存在を従業員に周知することも重要です。就業規則や社内イントラネット、掲示板などで相談窓口の連絡先を明示し、いつでも気軽に相談できることを伝えましょう。さらに、相談した従業員に対して不利益な取り扱いをしないことを明確にし、安心して相談できる環境を整えることが求められます。このような取り組みを通じて、従業員の悩みを早期に把握し、退職に至る前に問題を解決することができれば、退職代行の利用を防ぐことにつながります。
従業員の退職トラブルで弁護士に相談すべき理由
退職代行を使われた場面では、会社としての対応が法的に適切かどうかが、後のトラブルの有無を大きく左右します。ここでは、従業員の退職トラブルに直面したとき、なぜ弁護士に相談することが有用なのか、その理由を整理します。
法的リスクを正確に判断できる
退職代行への対応では、民法、労働基準法、弁護士法など、複数の法律が関係してきます。例えば、従業員の雇用形態が有期契約か無期契約かによって、退職の申し出に対する会社の対応は異なります。また、退職代行業者が弁護士か、労働組合か、民間業者かによって、交渉に応じるべきか否かの判断も変わってきます。さらに、有期雇用の従業員が主張する「(退職することの)やむを得ない事由」が法律上認められるものかどうかの判断も専門的な知識を要します。弁護士であれば、これらの法律を正確に理解し、個別の事案に即して適切な判断を下すことができます。また、会社が取るべき対応が労働基準法違反にあたらないか、ハラスメントとみなされるリスクはないかなど、法的リスクを事前に検討することが可能です。このように、弁護士に相談することで、法的に正しい対応を取ることができ、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
適切な対応方法のアドバイスが得られる
退職代行への対応には、法律的な知識だけでなく、実務的な経験も重要となります。例えば、退職代行業者への回答書の作成方法、従業員本人への連絡の取り方、業務引継ぎの依頼方法、貸与品の返還請求の進め方など、具体的な手続きについて助言を受けることができます。また、万が一従業員側から損害賠償請求や労働審判の申し立てがあった場合にも、弁護士であれば会社を代理して対応することが可能です。さらに、退職代行を使われた原因を分析し、今後の予防策についてもアドバイスを受けることができます。このように、弁護士に相談することで、単に目の前のトラブルに対処するだけでなく、将来的なリスクを軽減するための方策を講じることができます。
非弁行為への対処が可能になる
民間の退職代行業者が条件交渉を行うことは、弁護士法第72条で禁止されている非弁行為に該当します。しかし、実際には非弁行為を行う業者も存在し、会社側が適切に対処しないと、非弁行為を行う業者が蔓延ってしまいます。弁護士が介入することで、「これ以上の違法な交渉(非弁行為)は受け付けない」と警告を発し、毅然とした態度で業者を退けることが可能になります。また、業者が執拗に交渉を迫ってくる場合には、弁護士が会社の代理人として業者からの連絡に対応したり、必要に応じて非弁行為を日本弁護士連合会(日弁連)に通報することも可能です。このように、弁護士のサポートを受けることで、非弁行為に適切に対処し、会社の利益を守ることができます。
虎ノ門法律経済事務所和歌山支店のサポート内容
退職代行への初動対応支援
まず、退職代行から連絡が入った段階で、
- 退職代行業者の種類・権限の整理
- 当該従業員の雇用形態・就業規則の確認
- 会社としての基本方針(退職日・有給休暇・引継ぎ・貸与品返却など)の検討
を行い、退職代行や本人に送付する回答書の文案を作成します。
「何から手を付ければよいか分からない」「自社だけでは判断が不安だ」という企業様に対して、初動段階から弁護士が介入することで、感情的な対応や行き過ぎた対応を防ぎつつ、法的リスクを最小限に抑えることが可能になります。
特に、弁護士や労働組合が代理人として就いている場合には、法律的な主張が展開されることが予想されますので、会社側も弁護士のサポートを受けることが望ましいです。当事務所では、迅速かつ的確な対応により、企業の皆様の負担を軽減し、トラブルの拡大を防ぎます。
就業規則・労務管理体制の見直し
退職代行を使われるということは、会社の労務管理体制や職場環境に何らかの問題がある可能性を示唆しています。当事務所では、退職代行が使われた原因を分析し、就業規則の見直しや労務管理体制の改善についてアドバイスを行います。具体的には、退職手続きに関する規定の整備、ハラスメント防止規定の策定、相談窓口の設置方法、懲戒処分規定の見直しなどについて、法律に適合した形で規定を整備するサポートをいたします。また、労働時間管理の適正化、適切な賃金支払いなど、労働基準法を遵守した労務管理体制の構築についてもアドバイスいたします。これにより、退職代行の利用を未然に防ぐとともに、法令遵守の体制を整えることができます。
予防法務としての顧問契約サービス
退職代行への対応を含め、日常的な労務管理の相談に迅速に対応できるよう、当事務所では顧問契約サービスを提供しています。顧問契約を締結していただくことで、退職代行業者から連絡があった際にも、すぐに弁護士に相談し、適切な対応を取ることができます。また、従業員の採用から退職に至るまでの労務管理全般について、日常的にアドバイスを受けることができますので、トラブルを未然に防ぐことが可能となります。顧問契約では、就業規則のチェック、労働契約書の作成、ハラスメント研修の実施、労働基準監督署への対応、従業員とのトラブル対応など、企業の労務管理を包括的にサポートいたします。さらに、定期的に企業を訪問し、経営者や人事担当者と直接お話しする機会を設けることで、企業の実情に即したアドバイスを提供いたします。予防法務の観点から、トラブルが発生してから対応するのではなく、トラブルを未然に防ぐ体制を構築することが、企業にとって最も重要です。
まとめ
退職代行を使われた場合、企業側は冷静かつ適切な対応が求められます。まずは退職代行業者の身元と交渉権限を確認し、従業員本人の退職意思と雇用形態を慎重に確認することが重要です。その上で、退職届の提出依頼、有給休暇の確認、業務引継ぎの協議、貸与品の返還請求など、必要な手続きを着実に進めていきましょう。また、民間の退職代行サービスとは交渉に応じず、感情的な対応や無視は避けることが大切です。
退職代行を使われないための予防策としては、日頃から従業員との良好なコミュニケーションを保ち、ハラスメント防止措置を徹底し、従業員が安心して相談できる窓口を設置することが効果的です。
退職代行への対応では、民法、労働基準法、弁護士法など複数の法律が関係し、対応を誤ると法的トラブルに発展する可能性があります。弁護士に相談することで、法的リスクを正確に判断し、適切な対応方法のアドバイスを受けることができます。
退職代行を使われた際の対応や従業員の退職トラブルでお困りの方は、初回相談料は無料になっておりますのでお気軽に当事務所までご相談ください。












