介護現場のカスハラ放置のリスクと法的対応
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客からの要求内容や要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレームや迷惑行為を指します。具体的には、暴言や暴力、過度なクレーム、不当な要求などが該当し、従業員の精神的・身体的健康に深刻な影響を与える問題です。
しかし、介護現場におけるカスハラは、一般的なサービス業とは異なる特殊性があります。なぜなら、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第9条に「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。」と規定されているなど、介護事業者は、各法令や運営基準などで、正当な理由なく提供を拒むことができなくなっているため安易にサービス提供を中止することができないという事情があるからです。
そのため、介護事業者としては、どこまでが許容範囲で、どこからがカスハラに該当するのかを明確に判断し、適切な対応策を講じることが極めて重要になります。
介護現場で発生するカスハラの実態
介護現場におけるカスハラは、サービスの特性上、非常に多岐にわたる形で発生します。
ここでは、利用者本人から受けるハラスメントと、そのご家族などから受けるハラスメントの具体的なケースをご紹介します。
利用者からのハラスメント
介護現場では、利用者本人から様々な形態のハラスメントが発生しています。
これらの行為は、職員の心身に深刻な影響を与えるだけでなく、他の利用者へのサービス提供にも支障をきたす可能性があります。
- 身体的暴力
身体的暴力は、介護現場で最も深刻なカスハラの一つです。特に認知症の進行によって感情のコントロールが難しくなると、突発的な暴力が発生しやすくなります。例えば、介助中に突然殴られる、蹴られる、引っ掻かれるといった直接的な暴力行為が挙げられます。また、コップや食器などの物を投げつけられる、唾を吐きかけられるといった行為も含まれます。
これらの行為により、職員が怪我を負うケースも少なくありません。特に、首を絞められるなどの生命に関わる危険な行為については、即座に対応を取る必要があります。 - 精神的暴力
精神的暴力は、身体への直接的な危害ではありませんが、職員の心に深い傷を与える行為です。例えば、「変な顔」「役立たず」「介護士なんて誰でもできる」といった暴言や侮辱的な言動を繰り返し浴びせられることがあります。
また、職員の容姿をけなしたり、人格を否定するような発言を続けられることもあります。このような言動は、職員の自尊心を傷つけ、仕事への意欲を著しく低下させます。そして、長期間にわたって続くと、うつ病などの精神的疾患を引き起こす恐れもあります。 - セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメントは、特に女性職員が被害を受けやすい問題ですが、男性職員が対象となるケースも報告されています。具体的には、身体を不必要に触られる、卑猥な言葉をかけられる、性的な関係を迫られるといった行為が該当します。こうした問題は被害の性質上、誰にも相談できずに一人で抱え込み、精神的なダメージが深刻化しやすい傾向があります。
また、利用者が卑猥な雑誌を置いたままにするといった行為も、セクシュアルハラスメントに該当する可能性があります。なお、セクシュアルハラスメント全般について、行為者が問題性を十分に認識していない場合も多く、適切な説明や注意が必要です。
利用者家族などからのハラスメント
介護現場のカスハラでは、利用者本人ではなく、その家族や関係者によるハラスメントにも注意すべきです。
利用者家族からのハラスメントには、職員に対する罵詈雑言、過度な特別扱いの要求(夜間対応・特定職員の解雇等)、利用者へのサービス提供とは関係のない相談の押し付けなどがあります。また、施設を訪問した際に何時間も怒鳴り散らして帰らない、職員の個人的な連絡先を執拗に求めるといった行為も報告されています。
特に深刻なのは、利用者を思うあまりに感情的になってしまう家族の存在です。しかし、どれほど利用者を思う気持ちが強くても、職員に対する人格否定や暴言は許されるものではありません。そのため、事業者は毅然とした態度で対応する必要があります。
実際の裁判例から見るカスハラの深刻性
介護現場におけるカスハラ問題の深刻性は、実際の裁判例からも明確に示されています。東京地方裁判所・令和3年7月8日判決では、利用者家族による職員への継続的なハラスメントが契約解除の正当な理由として認定されました。
この事例では、利用者の子(被告)が施設のホーム長や職員に対して、「馬鹿野郎」「お前なんかやめちまえ」「あんなのクビだろ」といった暴言を継続的に浴びせていました。さらに、「刑事裁判を起こす」「看護職員より免許を奪う方法はあるのか」「ここを出ていく時はスタッフを個人名で訴える」といった脅迫的な発言も繰り返していました。
また、ホーム長を「エンドウ豆」「チビ」と揶揄したり、特定の職員を「デブ」「ハゲ」と侮辱するなど、人格を否定する言動も継続していました。そして、介護事業者側(原告)は、これらの行為により、職員の中には恐怖心から休職する者や退職する者まで現れ、ホーム長も心療内科を受診するに至ったと主張しました。
裁判所は、これらの行為が契約上の禁止事項に該当し、施設と利用者家族との信頼関係を「修復不可能な程度にまで破壊した」と認定しました。そして、原告による契約解除を有効とし、さらに契約解除後も退去しなかった期間について、通常料金の2倍の支払い(契約内容に「契約終了日までに利用者が退去しない場合には、利用者は、本件契約が終了した日の翌日から本居室の明渡日までの施設利用料として、…倍額…を支払う」という記載あり。)を命じる判決を下しました。
この判例では、原告から被告に対し送付した書面に、上記の具体的な受けた暴言の内容が記載されていたり、ホーム長の証言も具体的かつ詳細で、不自然な点もなかったことから信用性が認められました。このように、適切な記録を残し、段階的な対応を行っていれば、法的にも正当な契約解除が認められる可能性があります。ただし、そこに至るまでには職員の深刻な被害と事業運営への重大な影響が生じることは避けられません。したがって、このような事態に発展する前に、予防策と初期対応の体制を整備することが極めて重要です。
また、介護事業者ではありませんが、カスハラに関する判例を、こちらのコラム「従業員を守る!経営者のためのカスハラ対策」で3つ紹介していますので、ぜひご覧ください。
なぜ介護現場でカスハラが起こりやすいのか
介護という特殊な環境は、他の業界にはない、カスハラを誘発しやすい背景を抱えています。
その主な原因を理解することが、有効な対策を講じる第一歩となります。
認知症の進行による影響
認知症の進行は、介護現場でカスハラが発生する主要な要因の一つです。認知症が進行すると、前頭葉の萎縮により感情のコントロールが困難になります。その結果、些細なことで激高したり、暴言を吐いたりする行動が見られるようになります。
また、認知症の症状として、自分が置かれている状況を正確に理解できなくなることがあります。例えば、入浴介助や排泄介助を受けていることを不快に感じ、介護者に対して攻撃的な態度を取ることがあります。さらに、記憶障害により、同じ要求を何度も繰り返したり、説明を受けても理解できないといった問題も生じます。
ただし、認知症による問題行動については、単純にハラスメントとして処理するのではなく、医療的なアプローチを含めた総合的な対応が必要です。したがって、主治医やケアマネージャーとの連携を密にし、適切な治療やケアプランの見直しを検討することが重要になります。
利用者・家族の感情的ストレス
利用者や家族が抱える感情的ストレスも、カスハラの重要な背景要因です。
利用者本人の場合は、高齢になり、今まで当たり前にできていたことができなくなる現実は、利用者にとって大きな精神的負担となります。
また、介護が必要になったという事実を受け入れることができず、周囲に対して攻撃的になることがあります。
一方、利用者の家族についても、大切な人の介護を任せる不安などから、ストレスが蓄積されることが多いです。
特に、介護の質や職員の対応に対する不満が重なると、感情的な言動につながりやすくなります。
また、経済的な負担や、介護に関する知識不足から生じる不安も、ハラスメント行為の要因となることがあります。
そこで、事業者としては、利用者や家族の心理的な負担を理解し、適切なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが重要です。また、介護に関する正確な情報提供や、不安に対する丁寧な対応を心がけることで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
サービス範囲への認識のズレ
介護サービスの範囲に対する認識のズレも、カスハラが発生する重要な要因の一つです。介護保険制度では、提供できるサービスの内容や範囲が明確に定められています。しかし、利用者や家族の中には、これらの制限を十分に理解せず「お金を払っているのだから何でもしてもらえる」と期待している方も少なくありません。
例えば、訪問介護においてエアコンの掃除や庭の草むしりを要求されたり、デイサービスで他の利用者とは異なる特別な食事の提供を求められることがあります。これらの要求は、介護保険の適用外であり、対応することができません。
また、職員に対して過度な個人的配慮を求めたり、本来の業務時間外での対応を要求されることもあります。このような要求に対して適切に説明し、断ることができなければ、「サービスが悪い」「不親切だ」といった不満につながり、トラブルに発展することがあります。そのため、契約時の重要事項説明や定期的な情報提供を通じて、サービス範囲について十分な理解を得ることが不可欠です。また、要求を断る際には、その理由を丁寧に説明し、利用者や家族の理解を得る努力が必要になります。
カスハラを放置することで生じる3つの経営リスク
職員の離職と人材不足の加速
カスハラを放置することで最も深刻な影響を受けるのは、職員の離職問題です。継続的にハラスメントを受けた職員は、精神的な疲労が蓄積し、最終的に退職を選択することが多くなります。特に、介護業界はもともと人材不足が深刻化しており、貴重な人材を失うことは事業運営に致命的な影響を与えます。
また、カスハラが職場で常態化していると、新しい職員の定着率も悪化します。なぜなら、職場の雰囲気が悪く、安心して働ける環境ではないと判断されるためです。その結果、求人募集をしても応募者が集まらない、採用してもすぐに辞めてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
さらに、残された職員に対する業務負担が増加し、サービスの質が低下する可能性もあります。したがって、カスハラ対策は人材確保・定着の観点からも極めて重要な経営課題といえるでしょう。
安全配慮義務等の法的責任と損害賠償のリスク
労働契約法第5条では、使用者は労働者の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負うことが明記されています。これは、カスハラが発生している状況でも例外ではありません。事業者がカスハラの存在を認識しながら適切な対策を講じなかった場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性があります。
実際に、カスハラが原因で職員が精神的疾患を発症した場合、治療費や休業損害、慰謝料などの損害賠償を求められるケースも発生しています。また、労災認定を受けた場合には、労働基準監督署からの指導や改善命令を受ける可能性もあります。
サービス品質の低下と事業運営への影響
カスハラが継続的に発生している環境では、職員が本来の業務に集中することが困難になります。ハラスメント対応に時間と労力を割かれることで、他の利用者に対するサービスの質が低下してしまいます。また、精神的に疲弊した職員が提供するサービスは、質の面でも問題が生じやすくなります。
さらに、カスハラの影響は施設全体の雰囲気にも及びます。職員間のコミュニケーションが悪化し、チームワークが損なわれることで、総合的なサービス品質の低下につながります。その結果、他の利用者や家族からの信頼を失い、評判の悪化や利用者の減少といった事業運営上の問題に発展する可能性があります。
また、行政による指導監査で問題が発覚した場合、改善勧告や処分を受けるリスクもあります。これらの問題は、最終的に事業の継続性に関わる重大な経営リスクとなります。
介護事業者が実施すべきカスハラ対策
基本方針の策定と周知徹底
効果的なカスハラ対策の第一歩は、事業所としての明確な基本方針を策定することです。この方針では、どのような行為がカスハラに該当するのか、事業所としてどのような姿勢で対応するのかを明文化する必要があります。また、職員の安全と尊厳を守ることを最優先とする姿勢を明確に示すことが重要です。
策定した基本方針は、職員だけでなく、利用者や家族に対しても積極的に周知する必要があります。契約時の説明資料に含めたり、施設内に掲示したりすることで、カスハラに対する事業所の毅然とした態度を示すことができます。これにより、予防効果を期待することができます。
なお、基本方針の内容については、株式会社三菱総合研究所が作成し、厚生労働省が公表している「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」なども参考にしながら、自施設の実情に合わせて作成することを推奨いたします。
相談窓口の設置と対応体制の構築
カスハラが発生した際に職員が気軽に相談できる窓口の設置は不可欠です。相談窓口は、職員が安心して報告できるよう、匿名性を保つことができる仕組みを整備することが重要です。また、相談を受けた後の対応フローを明確にし、迅速かつ適切な対応ができる体制を構築する必要があります。
相談窓口の担当者は、カスハラに関する十分な知識と対応スキルを持つ管理者が担当することが望ましいです。また、相談内容によっては、外部の専門機関(弁護士、医師、行政機関など)との連携が必要になる場合もあるため、事前に連絡体制を整備しておくことが重要です。
さらに、相談した職員が不利益を受けることがないよう、相談者の保護についても明確なルールを設けることが必要です。これにより、職員が安心して相談できる環境を整えることができます。
契約書・重要事項説明書の活用
契約書や重要事項説明書にカスハラに関する条項を明記することは、予防策として非常に効果的です。具体的には、利用者や家族による職員への暴力や暴言、セクシュアルハラスメントなどを禁止事項として明記し、これらの行為が確認された場合の対応(警告、契約解除など)についても規定します。
また、サービスの範囲や限界についても詳細に説明し、過度な要求に対しては応じられないことを明確にします。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。さらに、利用者の認知症の進行などにより問題行動が見られる場合の対応についても、あらかじめ説明しておくことが重要です。
なお、これらの条項については、単に記載するだけでなく、契約時に十分な説明を行い、利用者や家族の理解を得ることが不可欠です。そのため、説明の際には分かりやすい言葉を使い、質問には丁寧に答える姿勢が求められます。
記録の徹底と対応マニュアルの整備
カスハラが発生した場合の記録を徹底することは、その後の対応や法的手続きにおいて極めて重要です。記録には、発生日時、場所、当事者、具体的な内容、目撃者、対応内容などを詳細に記載する必要があります。また、可能であれば録音や録画による記録も有効です。
対応マニュアルについては、カスハラの種類別に具体的な対応手順を定めることが重要です。例えば、暴力行為が発生した場合の緊急対応、利用者家族からの過度な要求への対応方法、関係機関への連絡手順などを明確にします。また、マニュアルは定期的に見直しを行い、最新の状況に合わせて更新することが必要です。
さらに、職員がマニュアルの内容を十分に理解し、実際の場面で活用できるよう、定期的な研修や訓練を実施することも重要になります。
職員への教育とケア体制
カスハラ対策においては、職員への教育とケア体制の整備が欠かせません。教育については、カスハラの定義や具体例、対応方法、相談窓口の利用方法などについて、定期的な研修を実施する必要があります。また、新入職員に対しては、入職時研修でカスハラ対策について必ず説明することが重要です。
職員のケア体制については、カスハラを受けた職員に対する心理的サポートが特に重要です。具体的には、カウンセリング体制の整備、メンタルヘルスチェックの実施、必要に応じた休暇の取得支援などが挙げられます。また、職員同士が相談し合える環境づくりも大切です。
なお、職員教育においては、利用者の認知症や精神状態についての理解を深めることも重要です。これにより、単純にハラスメントとして処理するのではなく、適切な対応方法を選択できるようになります。
弁護士に相談するメリット
カスハラ対策を自社だけで進めるには限界があります。特に事態が深刻化した場合には、法律の専門家である弁護士に相談することが、迅速かつ適切な解決への近道となります。
法的観点からの適切な判断
カスハラ問題で最も困難なのは、どこまでが許容範囲で、どこからが法的に問題となるかの判断です。特に介護現場では、利用者の認知症や精神状態を考慮する必要があり、一般的なサービス業とは異なる判断基準が求められます。弁護士に相談することで、個々の事案について法的観点から適切な判断を得ることができます。
また、労働法上の安全配慮義務の観点から、事業者として取るべき対応についても専門的なアドバイスを受けることができます。これにより、職員に対する法的責任を適切に果たすことができます。
証拠収集と記録化のサポート
カスハラ問題では、後の法的手続きに備えて適切な証拠収集と記録化が極めて重要です。しかし、どのような記録を残すべきか、どのような方法で証拠を収集すべきかについては、専門的な知識が必要になります。弁護士に相談することで、法的に有効な証拠収集の方法について具体的な指導を受けることができます。
例えば、当事者・目撃者の証言の記録方法などについて、専門的なアドバイスを得ることができます。
さらに、事業者として作成すべき報告書や記録書類の様式についても、法的な観点から適切な内容とするためのサポートを受けることができます。
利用契約解除の適法性確保
カスハラが深刻化し、利用契約の解除を検討する場合、その手続きの適法性を確保することが極めて重要です。介護事業者は、正当な理由がない限りサービス提供を拒むことができないとされており、契約解除についても慎重な検討が必要になります。
弁護士に相談することで、個々の事案において契約解除が法的に正当化されるかどうかについて、事前に検討することができます。また、解除手続きを行う際の適切な方法や手順についても指導を受けることができます。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。
さらに、契約解除後に利用者や家族から損害賠償を請求された場合の対応についても、事前に準備することができます。弁護士による適切なサポートにより、事業者として適法かつ適切な対応を取ることが可能になります。
虎ノ門法律経済事務所がサポートできること
当事務所は、企業法務、特に使用者側の労働問題を専門としており、介護事業者の皆様が直面するカスタマーハラスメント問題に対しても、強力な法的サポートを提供しています。
カスハラ対策の総合的コンサルティング
当事務所では、介護事業者のカスハラ対策について、総合的なコンサルティングサービスを提供しています。まず、現在の事業所の状況を詳細にヒアリングし、潜在的なリスクや問題点を洗い出します。その上で、事業所の規模や特性に応じた最適な対策をご提案いたします。
具体的には、基本方針の策定支援、職員研修の内容検討、関係機関との連携体制構築など、幅広い分野にわたってサポートいたします。また、既存の対策についても、法的観点から見直しを行い、より効果的な対策への改善提案も可能です。
さらに、継続的なサポートとして、定期的な状況確認や新たな問題が発生した際の迅速な対応も提供しています。これにより、事業者として安心してカスハラ対策に取り組むことができます。
契約書・マニュアル作成支援
適切な契約書や対応マニュアルの整備は、カスハラ対策の基盤となる重要な要素です。当事務所では、介護事業の特性を十分に理解した上で、実効性のある契約書や重要事項説明書の作成支援を行っています。
契約書については、カスハラ防止に関する条項の追加、サービス範囲の明確化、契約解除事由の適切な設定などを行います。また、利用者や家族にとって分かりやすい表現を用いることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
対応マニュアルについては、カスハラの種類別に具体的な対応手順を定め、職員が実際の場面で活用しやすい内容とします。また、法的な根拠や注意点についても記載し、適法性を確保した対応ができるよう配慮します。
緊急時の法的対応
カスハラが深刻化し、緊急の法的対応が必要となった場合、当事務所では迅速かつ適切な支援を提供いたします。例えば、利用者や家族からの不当な要求に対する回答書の作成、警察への相談時のサポート、行政機関との交渉代理などを行います。
また、職員が身体的な被害を受けた場合の損害賠償請求、刑事告発の検討、労災申請のサポートなども提供可能です。さらに、利用契約の解除を行う際の法的手続きについても、適法性を確保しながら進めることができます。
緊急時においても、事業継続に配慮した対応を心がけ、他の利用者への影響を最小限に抑えながら問題解決を図ります。
社内研修の講師担当
カスハラ対策の実効性を高めるためには、職員の理解と協力が不可欠です。当事務所では、介護事業者向けのカスハラ対策研修の講師として、実践的な研修プログラムを提供しています。
研修内容は、カスハラの定義と具体例、法的な観点からの対応方法、記録の取り方、相談窓口の活用方法、予防策の実践などを含みます。また、実際の事例を用いたケーススタディやロールプレイングを通じて、職員が実際の場面で適切な対応ができるよう指導します。
研修は、事業所の要望に応じてカスタマイズし、新入職員向け、管理者向け、全職員向けなど、対象者に応じた内容で実施いたします。また、継続的な研修実施により、職員のスキル向上とカスハラ対策の定着を図ることができます。
まとめ
介護現場におけるカスタマーハラスメントは、職員の心身に深刻な影響を与えるだけでなく、事業運営全体に重大なリスクをもたらす問題です。しかし、適切な予防策と対応体制を整備することで、これらのリスクを大幅に軽減することが可能です。
まず重要なのは、カスハラの定義を明確にし、基本方針を策定して利用者・家族に周知することです。そして、相談窓口の設置、契約書への適切な条項の記載、記録の徹底、職員への教育など、包括的な対策を実施する必要があります。
また、東京地裁の判例が示すように、適切な記録と段階的な対応を行えば、法的にも正当な契約解除が認められる可能性があります。ただし、そこに至る前に職員が深刻な被害を受けることは避けられないため、予防に重点を置いた対策が不可欠です。
さらに、カスハラ問題が複雑化した場合には、法律の専門家による支援が重要な役割を果たします。弁護士による法的観点からの判断、証拠収集のサポート、契約解除の適法性確保などにより、事業者として適切かつ迅速な対応が可能になります。
介護現場のカスハラ対策や契約解除の法的手続きでお困りの方は、初回相談料は無料になっておりますのでお気軽に当事務所までご相談ください。