債権回収の時効期間とは?時効が迫っているときの対処方法を解説

企業間取引では売掛金などの未回収の代金が発生することは一般的ですが、債権の時効が成立すると回収が難しくなり、自社の経理・経営にも大きな損害を与えかねません。

したがって、時効の完成期限が来る前に債権を回収できるように予め対策をしておく必要がありますが、時効制度についてあまり理解できていない方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、民法が定める債権の時効規定の概要や、時効完成を阻止するための対処方法を解説します。

債権回収の消滅時効に関する規定

民法が定める時効期間

債権回収の時効に関する最も基本となる規定は、民法第116条です。

(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

(引用:民法|e-Gov法令検索

時効はある時点を起算点(スタートする時期)として、この起算点から一定期間が経過することで完成します。第166条第1項第1号に書かれる起算点を主観的起算点、第2号に書かれる起算点を客観的起算点といいます。この2種類の起算点のうちいずれか早く到来したときに、債権の消滅時効が成立するのです。

なお、不法行為に基づく損害賠償請求権や、定期金債権といった特殊な債権については、別途規定が設けられているため注意しなければなりません。

令和2年改正前の旧民法が定める時効期間

上記した債権時効の規定は、令和2年改正の民法から定められたものです。改正前の旧民法では、客観的起算点を定めた一般規定とは別に、債権の種類別に異なる時効期間が細かく定められていました。以下は、旧民法における時効期間規定の例です。

・医療職務に関する債権:3

・弁護士の職務に関する債権:2

・売掛金:2

・給料債権、運送料:1

令和2年改正後の民法ではその規定の多くが廃止され、民法166条の内容に統一されています。ただし、改正前に発生した債権については、旧民法の規定に沿って消滅時効の期間が判断されることに注意が必要です。

債権回収の時効完成を阻止する2つの方法

債権の時効は、一度時効期間がスタートしたものであっても、一定の事由がある場合に完成を阻止することができます。時効完成を止める方法として民法に定められているものは以下の2つです。

・時効の更新

・時効の完成猶予

時効完成前にこのような手を打たなければ、時効が完成して債権回収が不可能になってしまいます。必ず確認しておきましょう。

時効の更新

時効の更新とは、進行している時効期間をリセットして、新たに時効期間をスタートさせる制度です。次のような事由がある場合には、その事由が終わるまでは時効は完成することなく、事由が終わるとそれまで経過した時効期間は効力を失います。

・確定判決又は確定判決と同一の効力を有するもの(支払督促、民事調停など)による権利の確定《民法第147条第2項》

・強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続・情報取得手続《民法第148条》

・権利の承認《民法第152条》

訴訟を途中で取り下げるなどして権利が確定しない場合は、一時停止していた時効が再び進行するので注意しなければなりません。

また、債務者による債権の一部弁済があった場合も、「権利の承認」に当たるため、時効期間が更新されます。支払いがまったく無い相手であってもしっかりと請求して、一部だけでも支払ってもらうことが重要です。

時効の完成猶予

時効の完成猶予とは、時効の進行を一時停止させ、一定期間だけ時効を延長することができる制度です。時効をリセットすることはできないものの、簡易的で迅速な手続きで対応できるため、時効の完成が差し迫った場面で有効な手段となります。

以下のような事由がある場合に、時効期間が止まって完成が猶予されます。それぞれの事由によって、時効完成が猶予される期間も異なるため注意が必要です。

・ 裁判上の請求・支払督促・訴訟上の和解又は調停・破産手続、再生手続又は更生手続への参加《民法第147条》
→終了のときから6ヶ月を経過するまでの間

・ 強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続・情報取得手続《民法第148条》
→取下げ又は取消しによって終了した場合、終了のときから6ヶ月を経過するまでの間

・ 仮差押え・仮処分《民法第149条》
→事由が終了したときから6ヶ月を経過するまでの間

・ 催告《民法第150条》
→催告のあったときから6ヶ月を経過するまでの間

・ 権利についての協議を行う旨の書面による合意《民法第151条》
【次に掲げるときのいずれか早いとき】
→合意があったときから1年を経過したとき
→協議を行う期間(1年に満たないものに限る)を定めたときは、その期間を経過したとき
→協議の続行を拒絶する旨の通知(書面)のときから6ヶ月を経過したとき

・ 天災その他避けることのできない事変《民法第161条》
→障害が消滅したときから3ヶ月を経過するまでの間

あくまで時効期間を延長するだけの規定であるため、基本的には完成が猶予されている間に時効の更新を図る必要があります。

時効が完成してしまった場合の債権回収について

消滅時効の完成期限を過ぎてしまった場合でも、ただちに債権回収ができなくなるわけではありません。消滅時効は、債務者側が時効を主張することで初めて効果が発生します。これを時効の援用といいます。つまり、時効期間を過ぎた後でも債権の回収をすることは可能です。そして、債務者が一部でも弁済をすれば、時効の援用は基本的に認められなくなるとされています。

ただし、あきらめる必要はないが時効が認められてしまうとその場で債権回収はできなくなるため、基本的には時効期間の満了前に対策をとるようにしましょう。

債権回収の時効が迫っているときの対処法

ここでは、債権回収の時効を阻止するための具体的な対処方法を4つ紹介します。

・内容証明郵便などによる催告

・相手方に対する債務と相殺

・協議する旨の合意

・支払督促

時効の完成猶予と更新が認められるように行動することが重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

内容証明郵便などによる催告

債務者に対して支払ってほしい旨を催告すれば、時効の完成が6か月猶予されます。支払いを求める意思が相手方に伝わればいいため、催告は電話や通常郵便でも可能です。しかし、証拠を残すために内容証明郵便を使って督促状を送ることを推奨しております。

送付するだけで時効の完成猶予が認められるため、非常に簡単かつ迅速に行える手続きといえます。

相手方に対する債務と相殺

時効完成を阻止する方法とは異なりますが、相手方に対する自己の債務と当該債権を相殺するという方法も有効です。債権回収をすることと同じ効果を得ることができます。この方法は相手方にとっても利点があるため、交渉が成立しやすいでしょう。

当然ながら、時効が完成してしまうと選択できなくなる手段のため、完成期限が到来する前に検討することが重要です。

協議する旨の合意

債権について当事者同士が協議を行う旨の合意が成立すれば、合意があったときから最長で1年間は時効の完成が猶予されます。この合意は、書面もしくはメールなどの電磁的方法で行わなければなりません。債務者側に、支払について協議したいと話を持ちかけ、相手方に受け入れてもらえるように交渉しましょう。

協議の中で分割弁済の取り決めをするなどの進展があれば、時効の更新事由にもなります。

支払督促

時効完成を阻止するには、支払督促も有効な方法です。支払督促とは、簡易裁判所の書記官に支払いを命じてもらう手続です。通常の訴訟よりも手続きが簡易的かつ短期間で申し立てができます。支払督促で確定した権利は確定判決と同等の効力があります。つまり、支払督促に対して債務者は異議を申し立てる流れとなりますが、異議が出されずに債権者の申し立てが確定すると、時効が更新されて確定時から10年の時効期間が再スタート《民法第169条第1項》するのです。

また、裁判所から通達されるため、内容証明郵便より相手方に支払いを強く促せることもメリットです。

債権回収を弁護士に依頼するメリット

債権回収を成功させるためには、弁護士に対応を依頼すべきです。

スピーディな対応が可能

1つには、非常にスピーディに請求手続を開始することができるメリットがあります。債権回収をするときには、相手が資産をもっているうちに早期に進めることが最重要です。

後になればなるほど、取り立て対象の資産がなくなってしまうからです。

弁護士に依頼すると、即時に相手に対するアプローチを開始し、その後も速やかに各種の手続きを進めていくので、確実に債権回収しやすいです。

適切な方法を選択できる

債権回収には、さまざまな手法があり、ケースによっても最適な方法は異なります。

自社で取り組むと、そうした判断ができずに、不適切な方法で時間を無駄にしてしまうこともありますが、弁護士に依頼すると、常に最適な方法を選択することができるので、失敗はなくなります。

当事務所のサポートプラン

当事務所が債権回収に関するサポートをさせていただく際には顧問プランのご契約をお勧めしております。

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まとめ

債権の未払いに関して有効な対処ができなければ、時効が完成して債権の回収はできなくなります。時効成立後に弁護士に相談をしたところで、解決することは不可能です。

債権回収に際しては、時効の完成を阻止しながら時効期間で相手方に債務を支払ってもらわなければなりません。確実に有効な手続きを進めるために、債権回収で困ったことがあれば早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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