従業員から未払い残業代を請求された際に気を付けたいポイント

未払い残業代の基本知識

未払い残業代とは、法定労働時間である18時間、1週間で40時間を超える超過労働に対して支払われるべき時間外割増賃金が支払われていない、または不当に低い場合の賃金債権を指します。残業代には、労働時間の延長、休日労働、深夜労働が含まれており、これらの支払いを怠ると未払い残業代が発生します。未払い残業代の請求には時効があり、20204月の法改正により時効は3年に延長されました。したがって、企業は最大3年分の未払い残業代が請求される可能性があることに注意が必要です。

未払い残業代が企業に及ぼすリスク

未払い残業代の適切な対応を怠ると、企業には以下のリスクが生じます。

(元)従業員からの未払い残業代請求

従業員や元従業員が法的手段を取り、未払い残業代の請求をしてくる可能性があります。(元)従業員は内容証明郵便を使用して未払い分の残業代を請求してきたり、労働組合を通じて請求してくることもあります。さらに、請求されているにもかかわらず、企業が何も対応をしない場合は労働審判や民事訴訟に発展する可能性があります。

遅延損害金と付加金の発生

残業代の未払いが認められた場合、遅延損害金(民法第404条)や遅延利息(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)、付加金(労働基準法第114条)などを未払い分に追加して支払う義務が生じます。

遅延損害金とは、残業代の支払いが遅れたことに対する賠償金のことを言います。従業員への未払い残業代に対する遅延損害金の利率は年利3%2024年記事執筆時点)となり、退職者(元従業員)の場合は、遅延利息が年14.6%と利率が高くなります。

また、裁判で未払い残業代が請求され、裁判所に認められた場合、「付加金」というペナルティが課せられることもあります。金額は最大で未払い残業代と同一額です(※1)。したがって、裁判所に未払いの残業代を請求されると、付加金を含めて元の2倍の金額を支払わなければならなくなる恐れがあるため、従業員1名からの請求であっても非常に大きな金額になることがあるので、注意が必要です。

1 付加金の支払(額)の判断は当事者の事情が考慮されます。

東京地判平20・1・28
(基準給を算定の基礎としたため、高額なものとなっている等)

→時間外割増賃金及び休日割増賃金の合計額の5割

大阪地判平13・10・19
(労基署の調査以降、就業規則を改改訂して、時間外割増賃金及び休日労働賃金、さらには、管理職手当について明文化して、賃金体系を整えたとの事情等)

→被告(※会社)に対して、制裁として付加金の支払いを命じることは相当ではない。

京都地判平4・2・4
(給与支給方法は労働基準法第37条に違反するといわざるをえない。)

→本件において認められる諸事情を斟酌し、その額を原告らそれぞれにつき50万円とする。

労働基準監督署からの調査や是正命令

未払い残業代の問題が労働基準監督署(労基署)に報告されると、企業は調査や是正命令の対象となる可能性があり、労基署は企業に対して立ち入り調査や是正勧告などの措置を取ります。もし、問題があると認められ、是正勧告が行われた場合は迅速に対応する必要があります。

従業員のモチベーション低下・人材流出

未払い残業代が発生していることが社内に広まってしまうと、多くの従業員が不満を抱くようになり、従業員の退職リスクが高まる恐れがあります。ストライキを起こされるリスクも秘めており、顧客へのイメージダウン、業績低下にもつながる恐れがあります。

未払い残業代を請求された際の初動対応

未払い残業代を請求された場合の初動対応として、主に以下の事項が挙げられます。

請求内容の確認と未払い残業代の算定

請求書や通知書を受け取ったら、まずは内容を確認します。企業側で未払い残業代の正確な算定を行い、請求額との差異や今後の対応を検討します。労働時間や給与記録を基に、従業員の未払い残業代を正確に算出し、請求内容に対して誤解や誤りがある場合は、適切に対応しましょう。

解決の方針を検討

解決方法としては、示談交渉・労働審判などが考えられます。通常、示談交渉を最初に行い、双方の合意によって問題解決を図ることが多いです。労働審判や訴訟は時間と費用がかかるため、示談交渉が適切に進まなかった場合に検討しましょう。事案によって、対応方法は異なるため、解決の方針の検討する段階から弁護士に相談し、最適な解決策を選択することができるようにしましょう。

未払い残業代を予防するための対策

上記のような対応を迫られないよう、予防するための方法として以下の対策が有効です。

労働時間の明確な管理と記録

日々の労働時間を正確に管理し、記録を行うことで、従業員から請求された際に実情との照合が容易になります。勤怠管理システムやタイムカードを使用して労働時間を適切に管理しましょう。また、タイムカードの保管は、従業員の労働時間を管理するための“重要書類”ですので、保管義務や保管期間に従って適切に管理する必要があります。

労働環境改善と生産性向上の取り組み

過度の労働時間や過重な業務負荷によって、未払いの残業代は発生しやすくなります。企業としては、従業員が安全で快適な環境で業務に従事できるよう労働環境を改善しましょう。また、未払い残業代を防ぐために残業削減への意識を高めていくことも必要です。労働の平準化やIT化推進などによる生産性向上の取り組みを進めていくことでも検討しましょう。

まとめ

従業員から未払い残業代の請求を受けた場合、迅速かつ適切な対応をとる必要があります。また、未払い残業代を予防するためには、労働時間の管理と記録、労働基準法の遵守、労働環境の改善が不可欠です。もし、残業代請求対応や管理体制に関してお困り事がございましたら、お気軽にご相談ください。

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