誹謗中傷対策!企業が知るべき情プラ法
文責:弁護士 野上 晶平2025年4月1日に「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」、通称「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が施行されました。これは従来の「プロバイダ責任制限法」を改正したもので、インターネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害などの問題に対処するため、大規模なSNSや掲示板などのプラットフォーム事業者に新たな義務を課す法律です。企業経営者の皆様にとって、この法改正がどのような影響をもたらすのか、詳しく解説いたします。
情プラ法が企業に与える影響とは
法改正の背景と目的
近年、SNSやオンライン掲示板などの「情報流通プラットフォーム」の普及に伴い、インターネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害が深刻な社会問題となっています。特に、企業に対する悪質な投稿や風評被害が増加しており、多くの経営者が対応に苦慮しているのが現状です。そこで、被害者救済を迅速かつ確実に行うために、プロバイダ責任制限法を大幅に改正し、「情報流通プラットフォーム対処法」として生まれ変わりました。
この法改正の主な目的は、被害者保護の強化と共に、プラットフォーム事業者の対応の迅速化および運用の透明化を図ることにあります。従来は削除要請をしても対応が遅かったり、基準が不明確だったりする問題がありましたが、新法ではこれらの課題を解決し、より実効性のある対策を実現することを目指しています。
情プラ法の対象となる「大規模特定電気通信役務提供者」とは?
情プラ法の対象となるのは「大規模特定電気通信役務提供者(大規模プラットフォーム事業者)」と呼ばれる事業者です。これは総務大臣により指定される、一定規模以上のSNSや掲示板などのプラットフォームを運営する企業を指します。では、どのような企業が「大規模」と判断されるのでしょうか。
指定の基準となるのは、平均月間発信者数や技術的対応可能性などです(第21条)。具体的には、月間利用者数が数百万人を超えるような大手SNSプラットフォームが主な対象となります。したがって、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、YouTubeなどの大手SNS事業者がこれに該当すると考えられます。また、国内の主要な掲示板サイトやコミュニケーションアプリも対象になる可能性があります。
ただし、すべての企業がこの「大規模特定電気通信役務提供者(大規模プラットフォーム事業者)」に該当するわけではありません。自社のウェブサイトやブログ、小規模なコミュニティサイトを運営している企業は、原則として直接の規制対象とはなりません。しかし、事業の成長に伴って利用者数が増加した場合は、将来的に対象となる可能性もありますので、法律の動向には注意が必要です。
情プラ法で課される主な義務と期待される効果
新たに課される主な義務とは
情プラ法では、対象となる大規模特定電気通信役務提供者(大規模プラットフォーム事業者)に対して、以下のような新たな義務が課されることになりました。
- 削除申出窓口の整備・公表(第23条)
被害者が容易に削除申請できるよう、電子的な手段を含む申出方法を整備し、公表することが義務付けられました。これにより、従来は削除要請の方法が分かりにくかった問題の改善が見込まれます。例えば、専用のフォームを設置したり、申請手順を明確に示したりするなど、被害者にとって利用しやすい窓口の提供が求められます。 - 削除申出への対応体制の整備(第24条・第25条)
侵害情報調査専門員を選任し、申出に対する調査を適切に行う体制を整えることも必須となりました。この専門員は、法律的知識や情報の分析能力を持った人材である必要があります。 - 削除申出に対する判断・通知(第26条)
申出を受けた日から原則として14日以内に、送信防止措置(削除など)の可否を申出者に通知することが義務付けられました。これまでは対応期間が明確でなかったため、被害者が長期間不安な状態に置かれることがありましたが、この規定により迅速な対応が期待できます。 - 削除基準の策定・公表(第27条)
送信防止措置を講じる際の基準を策定し、公表しなければなりません。これにより、どのような場合に投稿が削除されるのかが明確になり、利用者にとっても予測可能性が高まります。 - 発信者への通知(第28条)
情報の削除を行った場合、その旨および理由を発信者に通知することも義務となります。これにより、発信者側も自分の投稿がなぜ削除されたのかを理解でき、不当な削除に対して異議を申し立てる機会を得ることができます。 - 実施状況の公表(第29条)
毎年、削除申出の受付状況や対応状況などを公表することが求められます。これにより、対応の透明性が高まり、社会的な監視も可能になります。
誹謗中傷対策をしたい企業に期待される効果
情プラ法の施行により、誹謗中傷に悩む企業にとっては、いくつかの重要な効果が期待できます。
まず、削除申請の手続きが明確化され、対応期間も法定されたことで、不適切な投稿に対する対応がより迅速になるでしょう。従来は削除要請をしても、対応が遅かったり、そもそも対応してもらえなかったりするケースがありましたが、今後は改善が見込まれます。
また、「削除基準の策定・公表」義務により、どのような投稿が削除対象となるのかが明確になります。これにより、企業としても自社への誹謗中傷が削除対象となるかどうかの見通しが立てやすくなるでしょう。
そして何より重要なのは、法的な枠組みが整備されることで、インターネット上のモラルや秩序が徐々に改善される可能性があることです。長期的には、企業に対する悪質な誹謗中傷や風評被害が減少し、健全なインターネット空間の構築につながることが期待されます。
まとめ(誹謗中傷対策で弁護士ができること)
まず誹謗中傷の投稿が法的に問題があるかどうかの判断をサポートします。一般的に「批判」と「誹謗中傷」の線引きは難しく、表現の自由との兼ね合いもありますが、専門家の視点から適切な判断が可能です。
また、プラットフォーム事業者への削除申請手続きを代行することもできます。情プラ法の施行により、削除申請の手続きは明確化されましたが、効果的な申請を行うためには、法的な根拠や証拠の提示が重要です。弁護士は最適な方法で申請を行い、削除の可能性を高めます。
さらに、削除申請が受け入れられない場合には、発信者情報開示請求や損害賠償請求などの法的手段を検討します。これらの手続きは複雑で専門的知識が必要ですが、弁護士がサポートすることで、適切なプロセスを踏むことができます。
加えて、企業のリスク管理の観点から、誹謗中傷が発生した際の対応マニュアルの作成や社内研修なども実施可能です。事前の備えを整えることで、実際に問題が発生した際に迅速かつ的確に対応できるようになります。
情プラ法の施行により誹謗中傷対策の法的枠組みが整備された今、専門家のサポートを受けることで効果的な対応が期待できます。インターネット上の誹謗中傷でお困りの方は、初回相談料は無料になっておりますのでお気軽に当事務所までご相談ください。












