債権回収の注意点とは?時効の問題について弁護士が解説
債権回収をする際に押さえておきたい時効の問題
取引先などが債務の支払をしないときには、スムーズに、かつ的確に債権回収を行うことが大切です。
しかし、さまざまな理由により、回収ができないまま、時間が過ぎてしまうこともあるでしょう。
そのようなときには、債権の時効に注意が必要です。
今回は、債権回収を行うときに注意したい「時効」の問題について、虎ノ門法律経済事務所の弁護士が解説します。
1.時効とは
債権の時効とは、支払をされないままに一定期間が経過すると、債権が消滅してしまうことです。
「長期間請求されていない」という事実状態が評価されること、「これだけ請求されない期間が続いたのだから、もはや請求はされないだろう」という債務者の期待を保護するという考え方が、時効制度の根拠です。
債権が時効にかかってしまったら、もはやその債権の支払を債務者に請求することができなくなってしまいます。
2.債権回収の時効の期間
債権回収を行う際には、まず時効期間を正確に把握することが重要ですなぜなら、2020年4月1日に施行された民法改正によって、この時効に関するルールが大きく変更されたからです。
そのため、経営者の皆様には改正前と改正後の両方の時効期間を理解していただく必要があります。
また、適用される時効期間を間違えると、本来回収できるはずの債権を失ってしまう可能性があるため、十分な注意が必要です。
ここでは、民法改正の前後で時効期間がどのように違うのかを具体的に解説いたします。
自社の債権がどちらに該当するのか、この機会にぜひご確認ください。
2-1.民法改正前の時効期間(旧民法:〜2020年3月31日)
まず、2020年3月31日以前に発生した債権については、改正前の民法が適用されます。
改正前では、以下のように債権の種類や職業によって時効期間が細かく分かれていました。
債権の種類 | 時効期間 |
小切手 | 6ヶ月 |
旅館やホテルの宿泊費、飲食料 運送費 大工や俳優、歌手、プロ野球選手の報酬 |
1年 |
弁護士報酬や公証人の債権 売掛金 労働者の賃金(給料) |
2年 |
約束手形の振出人や為替手形の引受人の債権 不法行為にもとづく損害賠償請求権 |
3年 |
一般的な商事債権 家賃・地代、利息やマンションの管理費 |
5年 |
一般的な民事債権 確定判決や、和解、調停により確定した債権 |
10年 |
債権や所有権以外の財産権 | 20年 |
このような複雑な制度のため、経営者にとっては自社の債権がどの時効期間に該当するのかを判断することが困難でした。
2-2.民法改正後の時効期間(現行法:2020年4月1日〜)
2020年4月1日以降に発生した債権については、改正民法が適用され、時効期間が大幅に簡素化されました。
改正後の債権の消滅時効は、原則として「債権者が権利を行使できることを知った時から5年間」または「権利を行使できる時から10年間」のいずれか早い方で成立します。
つまり、複雑だった職業別・債権別の短期時効制度が廃止され、ほとんどの債権について5年または10年に統一されました。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権など、一部の特殊な債権については別途規定があります。
また、この改正により、経営者の皆様にとって時効期間の把握が容易になり、より適切な債権管理が可能となりました。
なお、経過措置として、改正前に発生した債権は、原則として旧法の時効期間が適用されます(改正法附則10条)。
3.時効の更新と完成猶予
2020年4月の民法改正により、従来の「時効の中断」と「時効の停止」の概念は整理され、「時効の更新」と「時効の完成猶予」という名称・概念に再構成されました。
時効の更新とは、それまでに経過した時効期間をリセットし、新たに時効期間を進行させることです。
一方、完成猶予とは、時効の完成を一定期間だけ先延ばしにすることです。
時効の更新事由としては、債務者による債務の承認があります。
また、裁判上の請求や強制執行等において、確定判決により権利が確定した場合や、強制執行等の手続きが終了した場合も時効の更新事由となります。
これにより、時効期間が完全にリセットされ、新たに時効期間がスタートします。
時効の完成猶予事由としては、裁判上の請求(訴訟提起や支払督促など)の手続き中、強制執行等の手続き中、催告(内容証明郵便による督促等)から6か月間、仮差押えや仮処分の事由が終了してから6か月間などがあります。
さらに、改正民法では新たに「協議を行う旨の合意」による完成猶予制度(民法第151条)が創設されました。
これにより、債権者と債務者が書面またはメール等の電磁的記録で協議することに合意した場合、原則として合意時から1年間、時効の完成が猶予されます。
また、必要に応じて再度合意することで、本来到来する時効期間の満了時から通算5年を超えない範囲で猶予期間を延長することも可能です。
4.債権回収について弁護士に相談するメリット
債権回収について弁護士に相談することで、多くのメリットを得ることができます。
まず、法律の専門知識により、複雑な時効制度を正確に理解し、適切な回収手続きを選択できます。
また、弁護士が代理人として交渉することで、債務者に対してより強いプレッシャーを与えることができ、任意での支払いを促すことが可能です。
さらに、内容証明郵便の作成から訴訟手続きまで、一連の法的手続きを専門家に任せることで、経営者の皆様は本業に集中することができます。
加えて、時効の更新や完成猶予の手続きについても、最適なタイミングで適切な方法を選択してもらえるため、債権回収の成功率が大幅に向上します。
したがって、未回収の債権でお困りの場合は、早期に弁護士に相談されることをおすすめいたします。
5.虎ノ門法律経済事務所のサポート内容
虎ノ門法律経済事務所では、企業の債権回収について包括的なサポートを提供しております。
まず、債権の発生時期や内容を詳細に分析し、適用される時効期間を正確に判定いたします。
また、債務者の資力調査から回収可能性の検討まで、戦略的なアプローチで債権回収を進めてまいります。
さらに、内容証明郵便による催告、支払督促の申立て、仮差押えの実行、訴訟提起など、状況に応じて最適な手続きを選択し、迅速に対応いたします。
加えて、時効の更新や完成猶予の手続きについても、法改正に対応した最新の知識で適切にサポートいたします。
当事務所は、これまで多数の債権回収案件を手がけており、豊富な実績とノウハウを有しております。
したがって、回収困難な債権についても、あきらめずにまずは当事務所までご相談ください。
企業の健全な経営をサポートするため、全力で取り組ませていただきます。